今月の
エッセイ

7

2018

料理は限りなく楽しい
鋳物のフライパンと出合って
料理がさらに楽しくなりました

鋳物のフライパンに私が愛着を持つきっかけは、今から10年あまり前、息子がプレゼントしてくれた蓋つきのミニパンでした。岩手の鋳物師、小笠原陸兆さん作で、シンプルでモダンなデザインが今の暮らしにぴったり、少人数向きのサイズは重さも気になりません。これを使って私が初めて作ったのがハンバーグです。ふっくらジューシーな仕上がりは、ふだんステーキ派の夫も「おいしい」と喜んでくれました。カリカリベーコンや目玉焼き、フレンチトーストはもとより、タルトタタンの試作もこれで何十回と繰り返しました。
鋳物のフライパンのよさを知り、グリルパンも使うようになりました。ステーキが網焼きのように香ばしく焼き上がり、これには夫も大満足。今回ご紹介した焼きとりもグリルパンで焼いていますが、中はふっくら皮目はカリカリで、余分な脂は溝から落ちます。野菜もひと味違います。なすをこんがり焼いて塩、オリーブオイル、にんにくでマリネし、好みでレモンをひと絞りすれば、うちの定番の夏の前菜です。鋳物のフライパンは使い勝手がいいだけでなく、料理するたびに楽しくなり、おいしいものを作りたくなる。私にとってかけがえのない調理道具になりました。