今月の
エッセイ
2月
2016
料理は限りなく楽しい
おろし金に竹ざる⋯⋯、
使いやすい日本の道具たち
しょうがをすりおろしながら、気づいたことがあります。急いで勢いよくすりおろしたときは、しょうがの繊維が毛羽立ってしょうが汁を使うときはよくても、薬味にはちょっと舌触りが悪いのです。一方、息を整えてていねいにやさしくすりおろしてみると、繊維が残らずきれいにおろせて、しょうがの辛さに角がありません。おろし方でこんなに違うものかと驚きました。今回、ご紹介している「さといもミルク汁粉」でも、材料のさといもをおろし金でやさしくすりおろしています。口に入れたときのなめらかさは、やっぱりこのおろし方のおかげかしらと思いました。さらに言えば道具選びも大事です。うちにはプラスチック製やステンレス製のおろし器もありますが、ここぞというときは銅製のおろし金を使います。素材ならではの安定感があり、手仕事で目立てされた刃は鋭く繊細です。軽い力でさといもでも大根でもしょうがでもゆずでもきれいにおろせます。あらためて道具の力に感謝です。台所を見渡すと菜箸やふきん、すり鉢にすりこ木、水きりのいい竹ざる…、と使いやすくて重宝している日本の調理道具がいろいろ。これからも使い続けて、いいところを若い世代に伝えていけたらと思っています。