
醍醐味は最高。
お釈迦様は涅槃経の教えの中で、「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生酥を出し、生酥より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す。醍醐は最上なり」と教えています。段階的に乳を煮詰めていく乳製品の作り方を例に、余分なもの(邪念?)を徐々に排除して究極の悟りに至り、この世の煩悩から解脱することを表したもので、最高の味を醍醐味と言うようになりました。醍醐天皇・後醍醐天皇も歴史の教科書に出てきましたね。
牛乳を煮詰めていくと最後は一体何になるか? チーズに近いもの、また、一説には今で言うバターオイルとも。バターオイルは一般の家庭用には販売されていないので馴染みがありませんが、ケーキやパンやお菓子のコクや風味付けとして幅広く使われています。

待ち人は牛に乗って。
ちょっと小粋な小料理屋さん。入口の左右に「盛り塩」があるのをご覧になったことがあると思います。この盛り塩には、牛が深く関係しているのです。 中国の晋時代。時の帝には数え切れないほどのお妾さんがいました。毎晩、牛車に乗って一軒ずつ回っても何年かかることやら・・・。そこで、その中のひとりの女性が一計を案じ、家の前に塩をおいたところ、塩を舐めたさに牛がぴたりと止まってしまいました。帝はしかたなく? その女性の家を訪れたとか。ともあれこの故事から、「お客様を呼び込む」と言うことで、お店の前に盛り塩をするようになったといわれています。牛はミネラルを摂取するために、塩をたくさん摂取します。今でも牛舎には鉱塩が置いてあり、いつでも牛が舐められるようにしています。

牢と犠牲。
犠牲という漢字には、どちらにも牛へんがついていますね。古代中国の殷王朝時代(紀元前1600-1100年)では、農耕のための祭祀などで牛や羊、豚、犬などの動物を生贄にする風習がありました。中でも牛は大地の生産力を高めると信じられ、特に生贄として重要視されていました。そんな背景から、犠牲の漢字に牛へんを使うようになったと考えられています。牛にとってはありがた迷惑です。
もうひとつ、牢は、文字通り牛を屋根の下に囲うと書きます。大事な家族の財産である牛は、盗られたり逃げたりしないように、しっかり囲われていたんですね。牢屋、堅牢などと使われます。ちなみに古代中国では豚も大事な財産。家という字は豚を屋根の下に囲うと書きます。豚もまた、家族同様に大切にされていたのですね。

わたし速いんです。
のろのろ歩くさまを「牛歩」などといって誤解されていますが、わたし結構走ると速いんです。草食動物のひづめは、足のつめが進化(退化?)してできたといわれています。草食動物は集団で暮らしています。たくさんの目で敵の襲撃を見張っているのです。敵を一瞬でも早く察知し、ひたすら走って逃げきることしか生き延びる道はありません。速く、しかも長時間疲れずに走ることが求められます。ひづめは効率よく長時間走れるように5本の指が進化しました。ひづめの数が奇数の奇蹄類と偶数の偶蹄類に分類されています。牛は前に2本の主蹄、かかとのところに2つの副蹄があります。究極は、ひづめがひとつ(中指といわれる)しかない馬です。2本はキリン。3本はサイなどです。世界最速のハンターはチーターですが、いかんせん持続力がありません。時速100Kmを維持できるのはわずか数秒です。

「ブランド」の起源
「あの“ブランド”の洋服は私のお気に入り」などと使われている「ブランド」という言葉は、牛の焼印から生まれました。
昔、広大な放牧地には複数の農家がいっしょに牛を放牧していました。その中から自家の牛と他家の牛を取り間違えないようにその家のマークの付いた「焼印」を牛のお尻のあたりに押していました。
英語で「焼印を押す」は、Burnedといいます。
ここから、他のものと差別化する銘柄やマークを「ブランド」と呼ぶようになったのです。

牛皮と求肥
もち米の粉に砂糖や水飴を練りこんだ牛皮は、もっちりとした食感で和菓子の材料としていろいろと加工されています。
平安時代に中国から伝わった牛皮は、当初、玄米を使っていたので色が黒っぽく牛の皮に似ていたことからこのように呼ばれていました。
しかし、当時、牛豚馬など肉を食べることを禁じていたので、帝の命により「求肥」と字を改めたといわれています。

牛耳る
中心人物になってみんなを思い通りに動かすさまを「牛耳る」といいます。
なんで牛の耳? とお思いだと思います。
紀元前の春秋戦国時代の中国で、諸侯が盟約を結ぶときには、生贄の牛の耳を切って、その血をみんなですする習慣がありました。(血判状みたいなもの?)
その際、最初に牛の耳を切る者が「会盟の長」となったことから「牛耳る」という言葉が生まれました。

ごぼう
きんぴら、柳川鍋、けんちん汁などになくてはならない野菜「ごぼう」。独特の風味と食感が特徴です。
ところで、「ごぼう」を漢字でかけますか?
「牛蒡」と書きます。
なぜ「牛」なんでしょうか?
牛蒡は、キク科の薬草として中国から伝わりました。
中国では草木の大きなものをあらわすのに「牛」という字を使います。ごぼうは、「蒡」という草に似ていて「蒡」より大きな植物だったので「牛蒡」となったのだそうです。アザミのような花が咲きます。
牛蒡を“栽培して”根を食用にしているのは日本人だけといわれています。 そういえば、戦時中に捕虜の外国人に、少しでも野菜不足を解消するために、苦労して調達した牛蒡の煮物をだしたところ、「木の根っこを食べさせられた。捕虜虐待である」と訴えられ、戦犯裁判で有罪になったという笑えない話も残っています。