チーズを食べると太る??

最近、特に若い女性を中心にチーズを使った料理が大人気になっています。ピザ、フォンデュ、ラクレットなどは勿論、タッカルビも人気です。また、日本国内でチーズを製造する事業者数も年々増え、2018年には270を超えています。

雪印メグミルクのお料理レシピ「2種のチーズタッカルビ」
雪印メグミルクのお料理レシピ「チーズフォンデュ」

こうしたチーズ人気の一方で、「チーズって脂肪が多いので、太るのでは?」と心配される方も多数いらっしゃいます。実際、肥満気味の女子大生はそうでない女子大生に比べて、チーズを食べることを控えているという報告もあります(松田、名古屋文理短大紀要、No22: 79-84, 1997)。無理もありません。チーズの約30%は脂肪なのですから(表1)。

(表1) 牛乳 200g、チーズ 30g で食事摂取基準値の何%を摂れるか

基準値:『日本人の食事摂取基準(2015年版)』 消費者庁作成表示用基準値、成分値:七訂食品成分表

チーズプロフェッショナル協会、
「チーズを科学する」、幸書房2016より転載許可

ひと昔前であれば、脂肪の摂取が多いと肥満になり、その結果心疾患など血管系の病気(脳梗塞、心筋梗塞など)になりやすいと考えられていました。お医者さんの多くも、肥満が原因で高血圧や血管系疾患などメタボと診断された患者さんには「脂肪の摂取を控えなさい。牛乳も無脂肪乳や低脂肪乳を飲みましょう。」と指導していました。日本だけでなく、肥満者が日本よりはるかに多い米国でも脂肪摂取を抑えるよう国を挙げての取り組みが行われました。大々的なキャンペーンのお蔭で、アメリカ国民の脂肪摂取量は確実に低下しました。ところが、肥満者数は減らないばかりか、逆に増加してしまったのです。「オイ、オイ、話が違うぞ!」ということで、何故そうなるのかを究明する研究が行われました。その結果、脂肪摂取量が減った分、炭水化物の摂取量が増えていたことが判明したのです。そこで、炭水化物犯人説が浮上し、皆さんもご存じの“糖質制限ダイエット”につながりました。つまり、脂肪が多い食品を常識の範囲で食べていても、それが直接肥満につながるのではなく、むしろ炭水化物を摂り過ぎると肥満になりやすいということです。

一方、牛乳・乳製品を継続的に食べると太るのか?という課題についても昔から盛んに研究されてきました。それらの結果は太る、痩せる、どちらでもないと3通りの報告がされており、大半の研究報告はどちらでもないと報告しているものの、結局どうなのさ、と釈然としません。結果がマチマチなのは、対象者の選定、調査方法や解析方法がそれぞれ異なるためです。さらに、一口に“乳製品”といっても様々であり、脂肪含量が高いものも低いものもあるのに、それらをひとまとめにして解析している点が明確な結果が得られない原因だと指摘されるようになりました。そこで、最近は乳製品の種類別、あるいは脂肪の含量別に解析されるようになりました。乳製品であれば脂肪含量が高いか低いかは肥満になるリスクとは無関係、もしくはむしろ脂肪が多い方がリスクが低いようです。なので、脂肪含量が高いチーズを食べても太る心配はないのです。

脂肪が多いのに何故太らない?その理由はまだ十分には解明されていません。ですが、カルシウムや乳脂肪に含まれているいくつかの脂肪酸が肥満抑制に寄与していると考えられています。しかしそれだけではありません。肥満の原因の一つは代謝異常です。代謝が正常に行われないと、脂肪をエネルギーに変換する効率も下がります。代謝を正常に保つためにはビタミンB12や亜鉛などの微量成分も関わっています。(表1)には 『日本人の食事摂取基準(2015年版)』に記載されている各栄養素を1日に摂取すべき量、牛乳やチーズ100g中に含まれるこれら栄養素の量、そして、1日に牛乳200g、チーズ30gを食べた場合に、食事摂取基準で推奨される摂取量の何%を摂ることができるかを示しています。カルシウムは必要量の30%も摂ることができます。それ以外にも、ビタミンB12や亜鉛も必要量の10%以上を満たすことができるのです。したがって、チーズは代謝を正常に保つために重要なビタミンB12や亜鉛も摂ることができ、チーズを食べても太りにくい理由のひとつである可能性があります。

さらに、チーズには炭水化物はわずかしか含まれていません。なぜならチーズ製造時にホエイを排除しますが、牛乳中の主要炭水化物である乳糖もホエイとともに排除されるからです。なので、血糖値が高い方や糖質制限ダイエットを行っている方にはうってつけです。
 このように、“チーズには脂肪が多いので、食べると太る”は杞憂であり、科学的根拠に乏しい都市伝説であることがお分かりになったと思います。いいね!とチーズを大いに楽しんで、健康的な生活を送ってください。但し、各々方、“過ぎたるは猶及ばざるが如し”ですぞ。いろいろな食材をバランスよく食べることこそ最高のダイエットだということをお忘れなく。

Text:Shunichi Dosako

堂迫俊一さん 農学博士(元・雪印乳業(株)技術研究所 所長、現・(NPO法人)チーズプロフェッショナル協会 顧問)

Profile:1974年雪印乳業株式会社入社。以来、大阪工場、技術研究所、研究企画部、栄養科学研究所、育児品開発部などを経て、2002年技術研究所所長に。2007年定年退職後、雪印メグミルク(株)ミルクサイエンス研究所主事としとして勤務。その後は(NPO法人) チーズプロフェッショナル協会顧問、(一社)Jミルク 酪農乳業史料収集活用事業推進委員を務めた。
著書:「チーズを科学する」(共著)チーズプロフェッショナル協会発行 幸書房 2016年11月11日発売。「新版 牛乳・乳製品の知識」 幸書房 2017年10月25日発売。

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