チャレンジChallenge

「北海道磯分内工場バター新棟」
安定的立上げへの挑戦

国産乳製品の生産を安定させなくては。
約200億円を投資した一大プロジェクトに、
バターや粉乳のプロフェッショナルが
名を連ねました。


コロナ禍までを
予測した人はいなかった…

筒渕

規模の大きさを考えれば、計画通りに進むプロジェクトではないことは想定していました。でもコロナ禍までを予測した人などいませんでした。2020年2月、ボイラーの試運転が始まった頃、クルーズ船での新型コロナウイルス感染報道が伝わってきました。以降、感染症対策と立上げが同時進行する、まるで想定外のプロジェクトに取り組むことになりました。

薄田

コロナ禍での進行は本当に大変でした。導入予定の充填機が海外製でしたから、技術担当者が来日できず、電話やメールでテスト進行することになりました。でもこちらの意向がなかなか理解してもらえないのです。

野月

苦労の最中の薄田さんには、「まず相手と良い関係を築きなさい」と伝えました。言語も考え方も違う者同士が、そう簡単に折り合うわけありません。ともかくお互いが信頼し合える間柄になることを勧めました。

筒渕

私もコミュニケーションの重要性をつくづく感じました。感染症の深刻さは日増しに増え、先行きへの不安は強くなるばかりでした。正解のない問題をひたすら解いているような毎日でしたが、とにかく問題があればメンバーで知恵を出し合い、社内のチャットで検討を繰り返しました。

野月

あの頃メンバーには、大丈夫!と繰り返し伝えていました。根拠は明快です。大丈夫なメンバーを選んだんだから大丈夫なんだと。コロナ禍を軽視していたわけではありません。でも私には、この想定外の事態もきっと乗り越えるに違いないという自信がありました。

筒渕

大丈夫!の言葉には励まされましたし、リーダーはいついかなる時も、不安な顔は見せないということを学びました。課長の顔は自信に溢れていました。この先私がリーダーとして采配を振ることになったら、今回の経験を生かしたいです。前途多難な毎日でしたが、最後までやりきれたことは大きな自信になりました。局面局面では弱音を吐いたこともあります。でも最後まで諦めませんでした。チャレンジは諦めたら終わり、と自分に言い聞かせてきました。

杉本

雪印メグミルクという会社そのものが諦めない会社です。過去に取り返しのつかない不祥事を経験しましたが、ゼロからの信頼回復に諦めることなく誠心誠意努め、その取り組みが終わることはありません。私はこの会社で29年間、大部分をバター作りに費やしてきましたが、諦めずチャレンジする精神は私にも息づいています。また今回のプロジェクトで、計画と準備の大切さを痛感しました。念入りな計画や細かな進捗管理が、プロジェクトを成功に導いたのだと思います。

野月

根拠のない「挑戦」は、単なる無謀に終わります。チャレンジには念入りな準備と正しい計画、そして確信が必要です。やる気だけでは息切れを起こし、やがて心がささくれだってきます。当初メンバーを悩ませた不安の払拭には、先を見通せることによる安心感を得るために納得のゆく計画を示す必要がありました。そこで、計画の立案はなるべく短期間で行い、長期と短期の目標を示し、やるべきことを一つひとつクリアにすることで、メンバーは計画達成を確信するようになりました。そうなればしめたものです。プロジェクトはゴールに向かい自走し始めます。

薄田

確信できる計画があったからこそ、ゴールに辿り着けたことは間違いありません。その計画を身をもって実証できたのは貴重な体験でした。この経験をこれからの仕事に役立てていきたいです。

杉本

リニューアルを心待ちにしている、他の工場もあるかと思います。今回の組み立て方がお手本になるはずです。

野月

今回のバター棟建設は、生乳の受入れから加工までを一貫して行うもので、バター脱脂粉乳の製造工場で考えた場合、雪印メグミルクとしては約200億円を投資する一大プロジェクトでした。この経験を今後に生かさない手はありません。他工場に水平展開するなら、ゼロから検討するよりも、まずは当工場を見に来て欲しいと思います。導入して良かったもの、もう少し検討するべきだったものなど立上げで培ったノウハウをつまびらかにしますから。

新しいライン構成で
ますます働きやすくなった!

薄田

バターの充填から箱詰めまで、一人のオペレーターで行えますし、機械の洗浄も自動化されるなど、これまで以上に働きやすさが向上しました。

野月

以前は設備変更のたびに増設してきたラインも、今回のリニューアルでとてもシンプルな構成に生まれ変わりました。運用上の制約も取り除け、今まで以上に働きやすい製造現場になったはずです。

筒渕

そうですね。あるラインで発生したトラブルが、別のラインに影響を及ぼすことは、かなり軽減されました。とてもフレキシブルな構成で働きやすいです。

杉本

作業負担が改善されたことで言えば、クリームのコンテナ輸送が自動化されましたし、資材搬送もロボットがやってくれます。省人と省力の双方が図られ、現場で働く者としては嬉しい限りです。それと、空調管理が行き届いたことで、夏の暑さや冬の寒さも気になりません。この上なく快適です!

野月

これまで製造現場は力仕事、体力勝負と言われてきましたが、これから違いますね。女性が重たくてできない仕事は男性にとっても負荷の高い仕事です。そういった場所に、ロボットや自動搬送システムを導入することで、作業負荷がとても軽減されたと思います。

薄田

私は自動化なんて本当に必要なのかと思っていました。でもいざ新棟で働いてみると、「あぁ、ここまで働きやすくなったんだ!」と驚くばかりです。

野月

改善されたのはライン構成だけではありません。安全面では、作業スペースを考慮した乳機の配置なども行っています。とりわけ注力したのはゾーニングです。より高い清浄度を保つために、外部からの包材の入れ方や靴の履き替え場所まで、細部にわたり目を光らせました。

筒渕

もちろん何より品質維持を優先させたゾーニングであるべきですが、優先するあまり作業がしにくくなってしまっては作業者の負担は減りません。そこを両立させるために、工場で働く人たちが、自分事としてしっかり考えました。

野月

機械は、入れて終わりではありません。どう使いこなすかを試行錯誤しながら、働きやすさと品質維持を高い次元で両立させていかなければなりません。その意味で、新棟は完成しましたが、今はまだ過渡期です。これからさらに使いやすい工場に向けた取り組みが続きます。