今月の
エッセイ

8

2016

料理は限りなく楽しい
夫が選ぶ器は個性的で、
私もやっと使いこなせるようになりました

今から23、4年前、横浜におしゃれなセレクトショップがオープンして、私たち夫婦も当時、住まいが近かったのでよく買い物に行きました。海外の作家や工房のモダンな食器も並んでいて、それまで見たこともない形や色柄の陶磁器やガラスにワクワクしました。でも実際に使うとなると戸惑う私に、夫は「あなたなら使いこなせると思うよ」といって、彼の目にかなったものを1つ、また1つと買い足してくれました。初めは飾って眺めたり、花を生けたりするばかりでしたが、ここ数年は食卓にもよく登場しています。器の個性に刺激を受け、ようやく楽しみながら料理を盛れるようになりました。それは家族のごはんを長年作り続け、料理家として仕事を重ねてきたおかげかもしれません。今、私が手にしているのは青い花が大胆に描かれた高坏のような鉢です。これにはにんじんコールスローを高く盛るときれいです。特別な料理ではなく、ふだん家族に作っている料理で楽しむことが、私にとっては使いこなせる自信につながっています。