スペシャルトーク！
宮間 あや × 丸山 桂里奈

――ここまで女子トップアスリートの「骨太思考」を聞いてきましたが、今度は「骨太思考」のお二人に文字通り、骨に関する知識をつけていただこうと思います。お二人にはクイズにも挑戦していただきますので、楽しみにしていてください。

宮間&丸山

お願いします。

――今回、スポーツ栄養学の専門家でいらっしゃる女子栄養大学の上西一弘先生をお招きしました。先生、今日はどんなことを教えていただけるのでしょうか？

上西

今日は骨の話ですけれども、先ほど話を聞いたら、今日はすごく勉強されてきたということなので。

丸山

誰が言ったんですか？（笑）　でもいつも骨とは一緒にいますからね（笑）。わかると思いますよ！

――さあ、女性アスリートの体づくりにはトレーニングと同じくらい食事が重要だと言われますが、お二人の若い頃はいかがでしたでしょうか？　怪我をしないように食生活で特に意識したことはありますか？

丸山

あや（宮間）はこう見えて、めっちゃ食べますよ。どこに入ってるの？　みたいな。

宮間

当時はね。

丸山

すごく食べていたよね。

宮間

（食事時間の）最後まで食べているタイプで、自分の体力の限界を超えるにはエネルギーがないとできないので、食べていました。

――ということで先生、期待できますね。

上西

そうですね。ちなみにお二人は「好き嫌い」はありますか？

丸山

ありますよ。私は生ものの中でも光もの（サバやアジ）が食べられないというか…食わず嫌いですね。そういうのを除けば食べられます。あやは？

宮間

私は、本当はすごくあります。

丸山

そうなの？　知らなかった。

宮間

好き嫌いはあるけど、現役時代は自分なりに栄養のことを勉強して、野菜とかが苦手だったんですけど食べるようにしていました。もう現役を引退したので、今は（嫌いなものは）食べていません。

丸山

もう選手じゃないからね。

上西

お二人は「女性アスリートの三主徴」という言葉を聞いたことはありますか？

丸山

いや、ないです。初めて聞きました。

上西

女性アスリート特有の3つの症状のことなんです。それでは早速、最初のクイズです。その「女性アスリートの三主徴」と呼ばれる3つの症状とは何でしょうか？

丸山

ヒントをお願いします。

上西

ヒントはなしです（笑）。一般の女性にもあてはまることはありますが、特にアスリートの場合は気をつけないといけないことです。

――それではお答えください。

宮間

２つしか思いつかないですが…「貧血」「生理不順」

丸山

「声が細くて聞こえない」「たまに首が座らなくなる」「肩幅がのびちゃう」

――では、丸山さんから聞きましょう（笑）

――宮間さんは？

宮間

私はこの2つしか出てきませんでした。

――貧血と生理不順ですね。

丸山

これは当たってるんじゃない？

――それでは先生、解答をお願いします。

上西

答えは「エネルギー不足」「無月経」「骨粗鬆症」です。エネルギーが足りないと生理不順が起こり、生理不順になるのは女性ホルモンが上手に出ていないということなので、骨がスカスカになって骨粗鬆症となります。それで疲労骨折のリスクが高くなるということで、この3つが「女性アスリートの三主徴」と呼ばれます。今、すごく問題になっているんですけれども、原因はエネルギー不足なんです。さっきお二人が言われたように、ちゃんと食べていれば大丈夫なんですけれども、運動すればエネルギー消費量が増えるじゃないですか。それに追いつくだけ食べていない、あるいは体重を気にして食べないという人もいますよね。

宮間

多いかもしれないですね。

丸山

そうかもね。

上西

そうするとエネルギーが足りなくなってしまうので、しっかりエネルギーを摂らないといけないということです。

宮間&丸山

勉強になる！

――宮間さんの回答は「貧血」「生理不順」でした。

宮間

50点くらいですかね？

上西

生理不順は合っていますね。ただし、貧血は女性アスリートに特化したことではなく、一般女性にも多いことなので。

――宮間さんには50点くらいあげてもいいですか？

上西

いいと思います。

丸山

ちょっと待ってください。点数は何か関係があるんですか？

上西

60点以上取らないと再試験です。

丸山

超やだ（笑）。聞いてないです！　みんなが帰った後に先生と2人だけで追試はきついです！（笑）

――これも丸山さんから聞きましょうか（笑）

丸山

骨には人間だけじゃないものがあると思っていて、一番近くにまずサメがいるかなって思ったんですよ。昔からよくサメの映画も見るし（笑）。それでサメエキスが入っているかなって思ったんですけど。

上西

素晴らしい。合格ですね。

丸山

えっ!? うそ!?

上西

間違っていますけど。

丸山

え！　間違ってるんですか!? じゃあ合格じゃないじゃないですか！

上西

ユニークな答えを出してくれるのは大事なことですから。

丸山

真面目に考えましたよ！

――では、宮間さんの回答は？

上西

正解。「骨はカルシウムの貯蔵庫」です。

丸山

えーっ!? そういうこと？　「貯蔵庫」なんて難しい言葉使うから分からなかった。

上西

（グラフの）横軸が年齢で0歳から80歳までになっており、縦軸が骨密度です。骨の中のカルシウムの量は、二十歳くらいがピークなんです。それからあとはほとんど増えない。ただ、貯蔵庫だから若いときにたくさん溜めておけば、段々減っていっても大丈夫ですよね。だから、いかに二十歳までに食べて、運動して、強い骨をつくるかがすごく大事なんです。

丸山

カルシウムなんて食べてたかな…。

宮間

牛乳は飲んでたんじゃない？

丸山

そうか。牛乳は毎日飲んでるし、20代まではめっちゃ飲んでいました。遠征とか合宿のときに出たもんね。

宮間

絶対にあったね。

――なるべく若いうちからカルシウムを摂った方がいいんですね。

上西

そうですね。ただ、骨はカルシウムだけでできているのではなく、タンパク質も必要ですし、ビタミンDやビタミンKなどいろんな栄養素も必要になるので、カルシウムだけを摂っていてもダメなんです。最近はサプリメントでカルシウムだけを摂る人がいますが、それではダメなんです。牛乳だったらカルシウム以外のタンパク質も入っているし、いろんな栄養を摂れるので、食品で摂るのが原則です。日本人のカルシウム摂取量が少ないのはご存知ですか？

丸山

そうなんですか。

宮間

知らなかった。

上西

（図の中に）赤い線がありますが、これが1日の推奨量です。成人女性の推奨量は650mgですが20代の人だと408mgしか摂っていませんし、30代の人も406mgしか摂っていません。だから日本人のカルシウム摂取量はすごく少ないんです。

丸山

70代の人は結構摂っているんですね。

上西

そうなんです。やっぱり骨粗鬆症や骨のことを考えるので、年を取っている人の方が結構気をつけているんですね。でも本当は若い人が摂らないといけないんですけれども、全体的に少ないということです。

丸山

カルシウムを摂るために牛乳なら何でもいいんですか？　例えばいちご牛乳とかもありますけど、純粋な牛乳の方がいいんですよね？

――カルシウムの吸収率が高いものもあるんですよね。

上西

乳製品の吸収率は高いですね。なので、特に子どもたちには牛乳、乳製品をしっかり摂ってほしいと思います。

丸山

へぇーっ！　「子供の頃から牛乳を飲もう」と言うのがこういう理由からだとは知らなかった。

上西

骨は出来上がったらそのままあるような固いものというイメージですよね。でも肌とかと同じように新陳代謝しているんです。

丸山

骨がですか？

上西

生まれ変わっているんです。

宮間

信じられない。

丸山

（外からじゃ）分からないもんね。

上西

そう、見えないんですけれども生まれ変わっていて、これがそれを示した絵です。難しい言葉ですが「骨吸収」といって骨を壊す細胞があります。それから「骨形成」といって骨をつくる細胞もあります。道路を車が走ると表面が傷んできますよね。そうすると定期的にアスファルトを削って、また埋め直していく。それと同じことが骨でも行われていて、古い骨を壊して、新しい骨をまたつくっているんです。

宮間&丸山

へぇーっ！

上西

全身の骨は3年くらいで入れ替わっているくらいのスピードです。

丸山

気づいていない間に…信じられない。

上西

そのときに、もし壊す細胞の方が張り切ってしまうと、骨はどんどんなくなっていきますよね。新しい骨をつくる細胞が骨をつくろうとしているときに、カルシウムが足りなかったら十分できないじゃないですか。だから、この2つの細胞の働きはすごく大事なんです。女性ホルモンはここに影響してくるので、女性ホルモンが出なくなってくると骨を壊す細胞の方が働き過ぎてしまうんです。閉経して女性ホルモンが出なくなると、骨がどんどん壊れていく。1問目の「女性アスリートの三主徴」にあった月経不順というのは、若いときに同じことが起こってしまうということなので気をつけないといけません。例えば、体操や新体操のような審美系のスポーツなどで体重を増やさないようにしていると、生理が止まってしまうことがあります。あとは陸上の長距離ですね。

宮間

陸上は聞きますよね。

丸山

長距離は特にね。

上西

そういった理由で疲労骨折が起きやすいんです。