牧場通信

北海道 石田牧場

牧場名 石田牧場
所在地 北海道野付郡別海町別海
開設 昭和40年
規模 年間出荷乳量  平成23年度 約600t
牛の頭数 140頭(経産牛90頭、育成牛50頭)
牛舎 スタンチョン方式(つなぎ飼い)

(2012年8月現在)

別海町は、2月には気温が-20度以下となり、厳しい寒さの余りに太陽が四角に見えることもある程です。しかし、寒さに強いホルスタイン(乳牛)にとっては快適なのかもしれません。町の人口は1万6千人余ですが、乳牛の数はなんと10万頭を超えます。

今回お話を伺ったのは、この地に生まれ育ち、「良い生乳は良い草から。」と徹底的に牛の餌の牧草にこだわっている石田敦(43歳)さん。牧草研究組織の「北矢ケレス友の会」(以下、「ケレスの会」)を立ち上げ、積極的に活動をされています。

森林を切り開いて

昭和初期、おじい様がこの別海の地に移り住みましたが、その後沖縄で戦死され、おばあ様が女手ひとつで家族を養うことに。当時は馬や羊などを飼いながら、いもなどの畑作で生計を立てていたそうです。
この辺りは熊も出るような森林地帯で、開拓・開墾など大変なご苦労をされたとのことでした。

現在の牧場は昭和40年頃から先代であるお父様が本格的に酪農を開始したのが始まりです。

そんな環境で育った石田さんは、幼少の頃から酪農が好きだったそうです。「自分の娘もそうだけど、自分も幼稚園・小学校の頃から、牛舎が遊び場だったね。遊びの延長で手伝いをしていたし、機械いじりも大好きだった。今でもどんなに長時間トラクターに乗ろうが全く苦ではないよ。」

自然な流れで酪農の道に進んだ石田さん。
地元の高校に通う頃には、既に一人前にトラクターを乗りこなすほどに。

石田さんにとって酪農は?とお聞きしたところ、「自分にとっては天職!」と即答。
「自分の身体を動かして・・・・合っているよ!機械も大好きだから、他の仕事もできると思うけど、酪農以外は考えられないね。確かに忙しいけれど、生活と仕事が一体化しているところも好きなんだ。」

きちんとメンテナンスされているトラクター

牛舎を新設

四年前に今の施設を新設。
あえて補助事業制度を利用せず、自己資金で作られたそうです。
「この仕事は5年10年続ければいいと思っているわけではなく、私たち夫婦で生涯酪農をしたいと思っている。
身体にムチを打っても、最低20年以上は酪農をやりたいと思っているので、納得ができる施設を作りたかった。」

それぞれの時代の主流はあれど、それが、自分たちにとって必要かどうか、石田さんはいつもそのことについて考え、全てにおいて自分の目の届く、こだわった牛舎にしました。
特に石田牧場の雑排水の浄化槽などは参考にしたいと見学者が来るほどです。

一方、搾乳システムについては、忙しい石田さんに代わって奥様でも扱いやすいものを導入したとのこと。

家族の存在

石田家はご両親、敦さんご夫婦、高校2年生、中学3年生の娘さんの六人家族。全員で酪農の仕事に取り組まれています。

「二人の娘には、休みの日には手伝いをさせているけど、夏休みなどはボーナスといって小遣いを割り増しているので、責任を持って仕事をやってもらっているよ。
最近は酪農家の子供達もあまり牛舎に行かなくなっていると聞くね。親がやっている仕事を知らないことは不思議でならない。私の家庭では、子どもに引き継がせるかどうか別として、しっかり仕事をやってもらっているよ。」
「牧草収穫時期は朝から夕方までトラクターに乗りっぱなしなので、そういった忙しい時は家族も割り切って手伝ってくれている。牛を牛舎に入れるのは私より子供達のほうがうまいかもしれないな(笑)。なんだかんだいって家族の存在はすごく助かっているよ。」

ケレスの会

石田牧場の飼養管理は、放牧が主体です。
新鮮でおいしい牧草をお腹いっぱい食べて、運動もして、ストレスのない牛が育ちます。

それだけに牧草にはとても気を遣っています。
「牛は草食動物。良い餌を与えたい。そのためには化学肥料に頼るのではなく、牛舎から出た堆肥を有効活用し循環させることが大切。」と石田さん。

牧草のアルファルファは、「牧草の女王」と呼ばれており、たんぱく質やミネラルが豊富な高栄養価の飼料として乳牛の餌にはとても適した品種です。
しかし、これまで土壌凍結地帯の道東では生育がうまくいかず、なかなか普及しませんでしたが、近年飛躍的にアルファルファの品種改良が進み、土壌凍結に適応できる草種として雪印種苗(株)の育成品種である「ケレス」が注目されるようになりました。

その普及拡大の立役者ともいえる「ケレスの会」は石田さんが仲間3人と発足した研究組織で、草地更新の時期や与える肥料の量、播種(たねまき)時期や収穫時期のタイミングなど、試行錯誤の末、栽培方法を確立しました。

現在は石田さんへの問い合わせや、牧場を見学する人も後を絶たないということです。

「ケレスの会」皆様と石田さん(前列赤いつなぎ服)

ちょうど取材当日に開催されたケレスの会の圃場(ほじょう)検討会に私たちも参加させていただきましたが、総勢70名を超える参加者に驚くとともに、石田さんをはじめ、地域の方々の牧草の品質向上にかける情熱を感じることができました。

石田さんは、毎日の仕事に加え、「ケレスの会」会長や別海地区酪農協議会の役員をされ、更に札幌に研修に行ったり、講演を引き受けたりと、多忙を極めています。

そんなに目の回るような忙しさで、大変ではないですか?と聞いたところ、
「道楽の一つだよ。特に視察に関しては、やる気がある人は誰でも喜んで受け入れる。」
自分たちのやれる範囲のことをやるつもりなのに、次第に大きくなっていく石田さんの活動範囲。
「はたから見ればやりすぎと言われているかもね(笑)」
当然、仲間とお酒を飲みながらも仕事について熱く語る機会も多く、奥様には応援されつつも、“あんた、いい加減にしなさいよ!”とあきれられることもあるそうです。

「うちは良い草を与えているだろう。牛も味が分かるんだ。我が家の牛は本当に食いつきが良いよ。
酪農ヘルパーさんに給餌をお願いすると『石田さんとこの牛はよく食べるから“増し増し”で餌あげないと』ってよく言われるよ(笑)」

良い草から

「良い草から良い生乳が出来る。このことを自分たちは大切にして生産しています。」消費者の皆さまにお伝えしたいことについて訪ねると、石田さんはこうおっしゃいました。
「もっと酪農業界に関連する様々な出来事や、現場での取り組みなど、色々なことをわかってもらいたい。酪農は閉鎖的なところもあるが、私はオープン。消費者の方々も自分は知らなくてもいいやと思わず、日ごろ自分たちが口にしてるものや、それに関することにもっと興味を持って欲しいと思っています。」

雪印種苗(株)や当社酪農担当者と。
良質乳生産や酪農経営の安定に向けて
日々のコミュニケーションを大切にされています

「感動」と書かれたTシャツを着る石田さん

編集後記

青々とした牧草を食べて、真っ白い牛乳が出て、それが黄色いバターやチーズになる。
よく考えてみると不思議ですね。

情熱を持って仕事に取り組んでいる石田さん。その情熱と人望に多くの人が集まっているんだな、とお話を伺って感じました。
当日はケレスの会の会合があったにも関わらず、貴重なお時間をいただきありがとうございました。インタビュー時は盛り上げていただき、笑いの絶えない取材になりました。

石田牧場の生乳は、雪印メグミルク(株)別海工場に搬入され、おいしいバターなどになっています。

雪印メグミルク(株)別海工場

2012年8月

雪印メグミルク「牧場通信」に戻る