牧場通信

愛知県 デイリーパラダイス

牧場名 デイリーパラダイス
所在地 愛知県田原市石神町月の木27
開設 昭和55年
規模 年間出荷乳量 約1,873t
飼料畑 1.2ha
牛の頭数 成牛/約170頭
育成牛/約50頭
牛舎 フリーストール
ホームページ http://dairyparadise.com/

(2007年11月)

デイリーパラダイスは、愛知県の渥美半島にあります。豊かな自然環境に恵まれ、日本でも比較的早くから酪農に取り組んだ地です。また、電照菊やメロン、キャベツ、ブロッコリーなど、野菜の生産が盛んです。
キャベツ畑が広がり、小高い山の懐に抱かれた自然環境の中に、バロック音楽の流れる牛舎「デイリーパラダイス」があります。

お話を伺ったのは、デイリーパラダイス社主の伊藤立(たつる)さん(54歳)。
この地での酪農は、おじい様の代からとのこと。
サラリーマンからのUターン組で、「酪農の王道をゆく」と基本に忠実な酪農を実施され、「より良い牛乳(もの)を より多く より安く」をモットーに酪農経営をされています。
また、現在は、積極的に酪農教育ファームなどを実施されています。

〜サラリーマンからの転進〜酪農に就くまで

おじい様が大正時代に牛を飼い始め、お父様が昭和48年に40頭の牛舎を建てて、そこから酪農専業になられたとのこと。
「千葉が日本で最初の酪農地と言われるが、この地区は、その次ぐらいに、古いところなんです」と。
長男のお兄様が酪農を継がれ、次男坊だった伊藤さんは、東京の会社のサラリーマンに。
12年ほどがんばったけれど、サラリーマンの何かと不合理な仕事がいやになり、自分の考えが活かせる仕事がないかと模索されていたそうです。
そんな折、昭和54年に、実家の近くに県や国の補助を受けた、石神酪農団地(6軒の酪農団地の計画)ができることを聞き、会社を辞め、Uターンして故郷に戻られました。

いろいろ調べて、まずは、愛知県種畜センター(現愛知県畜産総合センター)で一年間研修し、翌、昭和55年に、お兄様とは別の酪農家として、石神酪農団地に就農されたそうです。

「デイリーパラダイス」の名前とイラストの由来

牧場名の「デイリーパラダイス」は、「毎日が、人と牛の楽園(パラダイス)でありたい!」という強い思いで命名されました。
看板の牛のイラストは、種畜センター研修中に、友人にあれこれ注文して書いてもらったもの。班紋(白黒模様)は、実際に牛のモデルがいたそうです。牛が尻尾を立てるのは、テンションが高く、元気に走り廻る時。
「この看板のイラストは、勢いのある牛(牧場)になるように!という意味を込めているんですよ」(伊藤さん)

石の上にも3年

しかし、就農した年に全国的な乳量の大幅な生産調整があり、組合から割り当てられた出荷量は、わずか乳牛1頭分でした。
これでは、まったく採算が取れなくて、夢見て転職したのに最悪のスタートとなりました。借入金の返済のことを考えると夜も眠れない日々が続いたそうです。

でも、これでくじけないのが、伊藤さんでした。
暑い夏場になると牛の搾乳量がガタンと減ります。でも、牛乳の消費量は伸びます。
だから、割り当て量以上の出荷が可能になるのです。
そこで、「夏場は搾乳量が減るのは当たり前」の常識に反骨精神がむらむらとわきあがり、なんとか夏場に搾乳量を増やすにはどうしたらよいかを研究し始めました。
行き着いた先は、「牛がリラックスできる環境を作る」ということ。
これが、ミュージックシャワーや独特のえさの調合、牛舎の霧吹き装置などにつながっていくのです。
とにもかくにも、3年間は、ガムシャラに働いたそうです。

3年後、お兄様が酪農をやめることになり、牧場を譲ってもらい、生産枠が増えたことで、やっと経営が軌道にのりました。

清潔な牛舎の中

国際色豊かな人材

牧場のスタッフは、伊藤さんと奥様、ブラジル出身の女性アラシーさんとペトロさん、ペルーの男性ヘルナンドさん。そして、中国からの研修生が二人。
なんとも国際色豊かな人材です。
特にアラシーさんは、この牧場に勤めて15年。牛のこと、牛舎のこと、人のこと、なんでも知っている重要なスタッフだそうです。
牧場のまわりに、お花を植えてきれいにしてくれるのも彼女の仕事です。その他に非常勤で、2名がお手伝いしてくれます。

牧場に咲く花々

ストレスを感じさせない「牛の楽園」づくり

夏の暑さや湿度を嫌う牛のために、大型扇風機と細霧冷房装置が付けられました。
牛舎の霧は、気温25度以上で自動的に噴射。牛舎の天井にぐるっと設置されています。ミルキングパーラー(搾乳室)は毎回霧が出るそうです。牛も気持ち良さそうでした。

一番大切なのは、牛に与える餌です。
餌をたくさん食べて、良質な乳をたくさん出してもらうのが搾乳量を増やす一番良い方法です。
伊藤さんは、購入するお仕着せの飼料では満足せず、
いろんな配合を試して、牛がおいしいと感じる餌作りを研究したそうです。そして、餌の匂い(香り)によって食べる量が違うことを突き止めました。
みかん粕、酢粕、ビール粕などいろいろ試し、今は、酢粕を中心に香りの調整をしているそうです。
搾乳した生乳の品質にもこだわり、急速冷却のためのアイスビルダーを設置。酪農家でここまで徹底するのは珍しいそうです。

大型扇風機と自動霧噴射機
(細かい霧が出ています)

飼料を混ぜて、給餌する
大型のバーチカル・ミキサー

美味しそうに特製飼料を食べる牛たち


ミュージックシャワー(音楽浴)の効果

牛舎に近づくと、バロック音楽が聞こえます。そのキッカケは、「音楽を聴くと、アルファ波が出てリラックスする」とテレビ番組で知ったから。
最初は、牛舎にスピーカーを付けてラジオを24時間かけ続けていたところ、台風などのトラブルで、音楽が長時間途切れると牛に落ち着きがなくなり、ちょっとした物音にも動揺することがわかってきました。「牛にとって音楽を聴くことは、ストレスが減るんです。じゃあ、どんな音楽ならいいのか?いろいろ試してみました」(伊藤さん)
ひとつ疑問がわくと、実証して確かめるのが伊藤流。
伊藤さんが、演歌好きなことから、それも含めて、いろいろ試したところ、
・人の声が入ってない
・音の強弱が激しくない
→ クラシックのバロック音楽が一番イイという事がわかったそうです。今は、有線放送で24時間バロック音楽を聞かせています。
始めた頃は、8〜10%ぐらい乳量が増え、乳成分も数字で向上が確認できたそうです。
数値には出ないけれど、牛舎で働く人にも、音楽でいい雰囲気作りが出来るそうです。
「僕の話を聞きかじって、『牛に音楽を聞かせたけど乳量が増えない!』と言ってくる人がいる。でも、牛の給餌や世話などトータルでやりつくした上での音楽なんです」とのこと。

バロック音楽を聴きながらくつろぐ牛たち

「軽自動車が高速道路を走っている感じ」

デイリーパラダイスの牛たちは、「よくこんなに小柄なのに、結果が出せるね」と言われるそうです。平均的な牛よりも一周りも二周りも小柄で、「軽自動車が高速道路を走っている感じ」なのだそうです。
一日三回搾り、給餌などいろいろなことに気を配って、小柄ながら、充分な乳量を確保しています。

後継者

ようやく軌道に乗り始め、生活も安定し始めた昭和61年に、お見合い結婚され、女女女男の4人のお子様に恵まれました。長男は現在中学2年生で、親戚や周りの大人たちから「長男なんだから、お前が酪農を継げ」と言われているそうです。
本人もその気のようですが、でも、伊藤さんは、厳しい酪農経営を経験されているだけに「だれでも継げるものじゃない。俺から奪い取るぐらいの気迫がなければだめだ!」と言っているそうです。

お子様は、他にも活躍され、デイリーパラダイスのHPは、長女が制作し、ブログなどは、現在は、三女が管理されています。
デイリーパラダイスHPへ >>

パラダイスのペットたち

牛舎の入口には、セキュリティ部長犬の「ポッキー」が。セキュリティ担当なのに、伊藤さんに似て、とても人懐っこく、初対面の取材班にも、この笑顔(?)でお出迎えです。
草むしり隊長の「ポニー」は、牧場の周りの雑草を食べてくれる重要な美化戦力です。

草むしり隊長「ポニー」と伊藤さん

セキュリティ部長「ポッキー」

マウスハンター「もっくん」


編集後記

デイリーパラダイスの牛舎に入ったとき、しずかな音楽が流れ、牧場の周りにはきれいな花々・・・
人がリラックスして、こころ穏やかになる環境でした。
こんな素敵な牧場で愛情たっぷりに育てられた牛たちは幸せなんだろうなぁと感じました。
「デイリーパラダイス」で生産された生乳は、雪印メグミルクの豊橋工場に納入され「雪印メグミルク牛乳」や、「渥美半島酪農家さんのおいしい牛乳(地域限定牛乳)」になります。
取材へのご協力、ありがとうございました。
365日、日々努力されている酪農家の皆様から預かった生乳を、消費者の皆様へ「牛乳」としてお届けするために、雪印メグミルクは、これからも酪農家さんの声を消費者の皆様へお知らせしながら、酪農家さんが安心できるように、おいしい牛乳の安定的な生産拡大の期待に応えていきたいと思います。

(2007年11月)

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