雪印乳業株式会社
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お客様モニターの方々との活動
第2期近畿圏お客様モニターのご報告
2003年7月10日、近畿圏モニター第4回『生産者の方々との対話会』を「わくわくネットワーク」の皆様と、滋賀県大津市のブルーベリー農家&レストラン「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋(経営者は岩田さん)」でおこないました。近畿圏のモニターは16名中8名の参加となりました。
紀伊國屋さんは無農薬で良質なブルーベリーの栽培と、それを使ったジャムなどの製造で知られています。ブルーベリー農園を見学させていただいたあと、休業日というのに従業員の皆様が出勤して作ってくださったお料理をいただきながらの対話会となりました。とても甘いトマト、良質の国産大豆のみで作られたお豆腐、クリーン栽培のタマネギ、天然酵母のパン、雑穀のおにぎり、そしてもちろんブルーベリーも。どれも厳選された材料を使って真心込めて作ってくださったお料理に、茯茶という食物繊維とミネラルがとても豊富なモンゴルのお茶をいただきました。

はじめに会場をご提供いただいた紀伊國屋さん社長の岩田さんから、ブルーベリーの栽培を始められた頃からのご苦労や、自分たちの商品に込めた思いをお話しいただきました。

(岩田さん) よく生産者と消費者の距離が遠い、お互いのことを知る機会がない、というお話を聞きますが、私たちのところにはとても多くの方がお見えになる。電話をかけてこられる人もいる。そしていろいろなことを聞かれていく。消費者と自分たちの立場がそんなに遠く思われているとは思っていなかった。
わたしはお母さんが、お鍋でコトコト炊いて作るようなジャムを作りたかったし、それが自分の仕事と思ってやってきた。そのためには手間がかかるし、気も抜けない。できたジャムを殺菌のために加熱すると味が落ちるのでそれもやらない。だからカビの発生というリスクがある。しかし物作りということを考えたときに、「安全です。でも味が落ちます。」で本当に良いのか、との考えでやってきた。
だから100株運動で雪印を支えよう、と言われたとき、「あんなことをやった会社をなぜ支えなければいけないのか」と思った。でもできるだけ安全で新鮮なものを食べられるようにするためには日本の農業をつぶしてはいけない、酪農をつぶしてはいけないと考えたときに、できる人が、たとえささやかな金額でも出し合っていく、行動していくことが大切だと気づいた。雪印が、生産する人の汗とその思いとを大切にし、企業としてそれを商品という形にして出していくために、生産者としての声を伝える役割が果たせるのならやらせて貰おうと思った。


対話会はまず生産者の方から、つぎに消費者の方という順番でお話いただき、意見交換がおこなわれました。

「わくわくネットワーク」の皆様からの声
生産者の努力を本当にメーカーはわかっているのか、われわれの思いをありのままメーカーに伝えたいとの思いで、雪印との対話会をこれまでいろいろな生産者の現場でおこなってきた。辛辣な話も多く、担当者はつらかったと思うが良く来ていただいた。そしてこういう話はここだけでやることではなく、消費者の方にも一緒に聞いていただいて、生産者の思い、メーカーの思いを知って貰い、同時に消費者の人たちはどんな牛乳が欲しいと思っているのか、価格とか品質とかどうやって商品を選んでいくのかということについても話して欲しい、お互いきちんと分かり合いたいと考えている。
高いと思っていた食品の値段も、生産現場を見てみると真っ当な値段だと思えることがよくある。安全でおいしいものを作るためにはどうしてもこれだけかかってしまう、ということが分かったら、逆に安い食品を目にしたときに「真っ当な値段から何を差し引いたらこういう値段になるのか」という発想で見ていく必要がある。
物の後ろにあるもの、その背景も物と一緒に見せることができれば、価格も正しく評価してもらえるし、高くても選んでもらえる。雪印も「自分たちはこれからはこうだ」ということをきちんと論じて示すことができたら、その思いをバターとして、チーズとして出していけたら、お客様の「買いたい」という行動につなげることができるだろう。
生産者が作ったものをメーカーにゆだねる、商品として作ることをゆだねるということはどういうことなのかをよく知っておく必要がある。同時に消費者も原価いくらのものがどのような流通過程を経ていくらになるのだということを知っておく必要がある。私たちはいろいろな食べ物によって命を長らえているということに立ち返れば、元の原料であるとか、どういう過程を経てどうなったかということをきっとみんな知りたいと思うし、知ればもっと豊かにそれを食べられると思う。
大学で農学の研究をしている関係で、10年くらい農家をまわって調査し勉強させて貰っている。農家の人たちはみんな自分の作っているものに誇りをもっていると思うが、それをどこかで妥協し、自分の作りたいものではない方向でものを作っている方が実は多いのではないかという気がずっとしている。生産者の人たちの努力が正しく伝わり、作ったものが正当に評価されるならそうした状況も変わるだろう。たとえば千枚漬け、しば漬けとならんで京都の三大漬け物のひとつといわれる「すぐき」は、漬物屋ではなく上賀茂の農家が漬けている。漬けるためのノウハウも農家にある。そうすると価格競争に巻き込まれることもないし、みなプライドを持つ事ができる。でも農家の人たちは一般に寡黙で、そうしたことを伝えるのが苦手。もっともっとこういう伝えていく機会を増やしていくことが大切だと思う。
いろいろな国の牛を見て歩いているが、アメリカでは牛を太らせたり牛乳をたくさん出すように女性ホルモンを注射したりして、EUとの間で摩擦になっている。しかしそういう状況が日本には伝わってこない。知らない間にそういうものが入ってきて食べたり飲んだりするようになったら怖い。そのためにも日本の生産者やメーカーがしっかりする必要がある。
雪印のチーズ研究所を見学して、カマンベールチーズはこういう風に作られる、ゴーダチーズは何か月間かけて大事に育成される、ということを知ると高くても喜んで買っていただけるという話があった。「大企業だから物語を語れない」ということはないと思う。「どういう思いを込めて、どういう商品を作った」ということを語るべきだし、そういう思い入れのある商品作りをして欲しい。もっともっと語って欲しい。

お客さまモニターさんからの声
作っている人の顔が見える食べ物は「大事に食べよう」という気持ちがわいてくる。たんに買う側の立場で、高い/安い、おいしい/まずい、では駄目だと言うことが、生産者の方の話を聞くうちにわかってきた。自分も参加して一緒にいいものを作るんだという気持ちで話しあいを進めていかないといけない。お互い気持ち良い理解をしないといけないと感じた。
雪印の事件で、日本の食品に関する問題がつぎつぎと表に出てきた。これは良かったと思う。日本の食のあり方、乳製品のあり方を変えようという動きが出てきた。消費者にとっても、生産者にとってもいい時代の到来だ。事件を風化させないためにも、この機会を生かして、これからどう手を打っていくかが大切だ。これをうまくテコにしていったら、あの事件も日本の食のあり方を変え、軌道修正していったすごい出来事だったということになる。
生協で買っていれば安全、大企業の作ったものだから安心、という図式が根底から覆された。これからはブランドを見るのではなく、商品を見て買う時代になったのだと感じる。
「牛乳の末端販売価格は、原価をきちっと計算していけば本来水より安いというのはあり得ない。」という説明が雪印よりあったが、こうしたことをあまりやり過ぎるとどこかに無理がでてくる。ものの値段とはどういうものなのか、本来の価値とはどういうものなのかを、きちっと考えておく必要がある。
酪農とはどういう仕事なのか、企業は原料をどう加工し消費者に届けるのか、どういうものを私たちは欲しいのか、なにをどう変えて欲しいのか、変えて欲しくないのか、といったことをやはりきちっと伝え合う必要があるし、そういう時代になってきたと思う。
1,000円のチーズを買えるのはリタイアした人とか、子育ても終わり生活に余裕のできた人たちが多いのでは。いまから育っていく子供たちに、本当に安全で安心な食べものを安く届けられるように、企業として努力して欲しい。

生産者の方、消費者の方、それぞれにふだん思っていることや疑問をぶつけ合い、とても有意義な一日となりました。この日いただいた貴重なご意見やご提案に道筋をつけ、これから企業としてさらに努力していかなければと気を引き締めています。


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