酪連組合 設立趣意書(一部抜粋)

(前略) 練乳事業の第一条件は原料牛乳の新鮮なることでありますから、これを供給する区域は交通の便利な地方又は工場に隣接せる数里の地域(練乳地帯)に自ら限定せらるるは当然の帰結といわねばなりません。
もしそれ練乳地帯以外即ち交通の不便なる地方及び遠隔の地方を強いて練乳の原産地たらしめんとすれば多大の経費を消費したる上、練乳原料に適さざる不良乳(二等乳)を続出するはやむを得ざる次第にして、練乳業者も生産者も共に多大の損失を蒙らねばなりません。

かかる不自然な事柄が永続すべきでものではありません。然らばかかる地方を如何にせば良きやというに、適当なる施設の下にクリームを分離しこれをバターに製造し、一方脱脂乳はこれを利用して幼児の育成、豚、鶏の飼育等に用い真の有畜農業の経営をなすことが最も有利にして確実なる農法であります。
わが国の乳製品中将来において最も前途を有するものはバターであります。しかもその製法の簡単なると工場の設備に巨額の資本を要せざることが製酪の特徴でありまして、かの丁抹(デンマーク)農民が組合組織の下に如何に好成績をあげつつあるかは皆さんのご存知の通りであります。

(中略) 然るに未だこの必要欠くべからざる設備なきため、我等飼育業者は少なからざる損失と不便とを蒙りあることは誠に遺憾の次第でありまして、今日のまま自然の成り行きに放置去らんか、折角発達し来る本道の畜産はここに一大挫折を来し救うべからず窮況に陥るは識者をまたずして明らかなる事実であります・・(後略)」

※表現はやわらかいが、その底には何とかして酪農民の窮地を打開して、さらに組合主義のもとに酪農の揺るがざる基礎を築かんとする信念があふれている。