牧場通信

福岡県 木庭デーリィ・ファーム

牧場名 木庭(こば)デーリィ・ファーム
所在地 福岡県八女(やめ)市大字吉田
開設 昭和60年(就農)
規模 年間出荷乳量 約400t
飼料畑 約3ha×年2回(デントコーン)
牛の頭数 乳用牛 65頭(経産牛42頭・育成牛20頭)
牛舎 繋ぎ飼い

牧場周辺は茶畑

福岡市内から南へ車でおよそ1時間半。
木庭デーリィ・ファームは、「八女茶」で名高い福岡県八女市にあります。
住宅に囲まれたご自宅から、車で約20分。険しい山道を上り詰めた山頂に牛舎があります。周辺には茶畑が広がり、通り抜ける風が気持ち良い絶景のロケーションです。

今回、お話を伺ったのは、木庭健一さん(45歳)。
乳牛50頭ほどを家族で経営する木庭デーリィ・ファームは、北海道を除くと平均的な酪農家さんです。
木庭さんは、全国およそ1200軒の酪農家が参加する日本酪農青年研究連盟の副委員長で、九州協議会の会長の要職も務められ、日本や地域の酪農発展のために活躍されています。

酪農を志して

「木庭デーリィ・ファーム」は、お父様が自宅のある場所で、牛2〜3頭から始められました。その後、規模が拡大し、周りに住宅が立て込んできたこともあり、32年前(昭和50年)に近くの山頂を切り開いて現在の地に牧場を移されました。
長男だった木庭さんは、漠然と「おれは後を継ぐんだろうなぁ」と思っていたそうです。
酪農を志して、高校卒業後、数多くの酪農家を育てた北海道の酪農学園大学へ進学され、酪農を専門的に学ばれました。

昭和60年(1985年)大学卒業後、22歳で就農。
ご両親と3人で酪農をスタートすることになります。
子供のころから酪農は身近な存在だったので他の仕事に就くことは考えていなかったそうです。
木庭さんは大学で学んだことを生かして、最初から餌の管理や、種付けなど主な仕事をお父様から任されました。そして、現在は、木庭さんが管理全般と搾乳を担当し、ご両親と奥様と4人で、それぞれが自分が出来る仕事を分担してやっているそうです。

自然にはかなわない〜台風19号の大被害

今から17年前の平成3年(1991年)9月、猛烈な雨風を伴った台風19号が、長崎県佐世保に上陸、九州北部から日本海沿岸を北上し列島に記録的な被害の爪あとを残しました。
山頂に建つ牛舎は、台風の直撃を受けることに・・・。
借りていた従兄弟(いとこ)の牛舎が、全壊してしまいます。
木庭さんの牛舎も半壊、育成牛など9頭が死亡する大被害をこうむりました。
木庭さんは、育成舎(出産前までの成長期の牛の牛舎)や乾乳舎(次の出産に備える牛の牛舎)を自力で建て直し、搾乳舎(現在、搾乳中の牛の牛舎)をフル活用していました。その後、平成17年に、牛舎も増築して規模を拡大していきました。
「自然にはかなわないよね。今も台風が来るとすごく気になるよ。停電が怖いね。酪農は、電気がないと作業出来ないし、井戸の水も汲めないから、今は自家発電機を準備している」と木庭さん。
でも、そんな自然の脅威をバネにして粘り強くがんばっておられます。

夏でも涼しい環境で

木庭さんのデーリィ・ファーム牧場は、周りを茶畑に囲まれた山の上にあります。
ホルスタイン牛はもともと北国に適応した動物です。気温が上昇するとバテてしまい餌を食べなくなり、搾乳量が減ってしまいます。
この地方の夏は35度を越える暑さになります。山の頂上に牧場を建てたのは、少しでも涼しい環境で牛を育てたかったことや、近郊への牛の糞尿公害の心配がないためだそうです。
一時、牧場の敷地内で畑を作っていましたが、イノシシの被害があまりにもひどいのであきらめたそうです。

一応、番犬の「ミミ」を飼っているのですが、のんびり犬のためイノシシ対策にはまったく役に立ちません。

牧場にいたる道は、小型のトラック一台が通るのがやっとという狭い道。絞った生乳を回収する大型のタンクローリーが登ってこられません。毎日、自ら2トンの集乳車で回収して、自宅のある街中まで運んでいます。

自宅と牛舎が離れているので、毎日「通勤」する気分で、「仕事のON、OFFがはっきりしていい。」と木庭さん。搾乳は朝6時半と夕方17時半なので、毎日、山頂の牧場へ通っています。

牧場は猫の天下

牧場からの眺望

番犬「ミミ」


八女の地域とともに

木庭さんの母校、酪農学園大学の創始者、故黒澤酉蔵(くろさわとりぞう)翁は、『牛が排泄する堆肥を使って生命力あふれる良い土壌(健土)を作り、良い牧草や作物を育て、それを牛が食べてよい乳を出し、酪農家や地域の人たちが健康で豊かに(健民)になる』という「健土健民」資源循環型農業を唱えました。

自宅近くの飼料畑では、牛の飼料に混ぜるトウモロコシ「デントコーン」を年間2回作っています。良いデントコーンを収穫するために、牧場の牛糞から作った堆肥をたっぷり撒いています。
広々とした畑に、身がぎっしりの豊かなデントコーンが実ります。
秋には、2メートルの背丈の青々とした畑が広がっているそうです。

トウモロコシ「デントコーン」の収穫風景

収穫は、酪農家同士、
協同で機械を持ち寄って作業

協同で作業する酪農家の皆さんと


山頂の牧場では、ショベルカーを駆使して堆肥を作っています。
堆肥は、牛糞にワラやオガクズを混ぜ、有機物を微生物の力を借りて分解します。時折ショベルカーで切り返し、およそ、3〜4ヶ月かけてゆっくりと堆肥化します。堆肥には多くの栄養分が含まれ、匂いもなくさらさら。

堆肥の切り返し

近くのお茶畑にも木庭デーリィ・ファームの堆肥が使われています。
「ウチの堆肥を畑に撒くと、『葉に厚みが出るよ』と言われるんだ。畑は土作りが重要だからね。裏の茶畑にもどっさり入れてたよ」と木庭さん。
有機栽培のおいしい八女茶作りの秘訣がうかがえるお話です。
お茶だけでなく、田んぼや果樹(ぶどう、桃など)農家にも分けてあげて、お礼に、桃やぶどうをいただくのだそうです。
酪農と地域の農業が、助け合いながら「健土健民」を実行している木庭さんです。

隣の八女茶畑

健康な牛じゃないと

「品質の良い生乳を生産するには、まず、牛が健康なことが第一。毎日、牛をよお〜く観察することがだいじです。餌の食い残しはないか、色つやはどうか、ケガをしてないか、発情しているか」などなど・・・。
そうして健康状態をチェックした上で、たっぷりと餌を与えるのが品質の良い生乳を生み出す基本だそうです。

「今、酪農家は、牛乳消費の落ち込みや、餌などの原料高、低乳価などであえいでいるのが現状。」
「大型酪農と、小規模酪農が共存、共栄し、後継者や新規就農者が育つ、魅力的で力強い職業になっていかなければいけないと思う。」
「地域の酪農が、消費者にとって、もっと身近な存在でありつづけたいとも思っています」と木庭さん。

酪農家さんの牛乳利用法

酪農家さんの牛乳の活用方法を、奥様に聞いてみました。
牛が出産直後に出す「初乳」は、成分にムラがあるため5日間出荷することができません(乳等省令)。
捨ててしまうのももったいないので、「牛乳豆腐」を作ります。
温めた牛乳に酢をまわしいれて、布巾などで漉して水分取り除いたら出来上がり。初乳は成分が濃厚なためおいしくできるのだそうです。この「牛乳豆腐」をショウガ醤油で食べるのが美味。
酪農家さんの「まかない飯」というところでしょうか。

※乳等省令で、産後5日間の初乳は、免疫グロブリンが多いため出荷が禁止されているが、自家煮沸すれば飲めます。
※市販の牛乳でもおいしい「牛乳豆腐」を作ることができます。

作り方はこちら>>「牛乳豆腐の作り方」

また、ホットケーキやカレー、シチューなどに牛乳をたっぷり使用します。
「牛乳風呂も、お肌にいい」とお風呂に、牛乳を2〜3リットル入れることも。

木庭ご夫妻

牛乳豆腐

「若い人が、高校生ぐらいになって学校給食が終わるととたんに牛乳を飲まなくなってしまう。僕たちは、安全でおいしい牛乳を作るから、メーカーは牛乳を飲み続ける習慣をもっとPRしてほしい。」
と木庭さんから要請されました。

編集後記

大変お忙しい中、取材対応いただき本当にありがとうございました。
「牧場主が優しいと、牛舎の牛も優しい顔」と、雪印メグミルクの酪農担当が前に言っていたことがありますが、とても優しそうな目をした木庭さんと牛さん達でした。

木庭デーリィ・ファームで搾られた生乳は、雪印メグミルク福岡工場にも納入していただいております。
自然に逆らわず、でも自然に負けないで一生懸命搾っていただいた生乳を、新鮮でおいしい「雪印メグミルク牛乳」としてお客様にお届けしていきたいと思いました。

(2007年11月晩秋)

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