栗原はるみのミルクのある生活 栗原はるみのミルクのある生活

今月の
エッセイ

5

2017

料理は限りなく楽しい
うちで簡単にパンが焼けた!
その感動を伝えたくて

パン作りはこねるのがいちばん面倒な気がします。10分、15分とこねる作業をあえてやめてみよう。毎回レシピを見直さなくてもいいように覚えやすい分量にしよう。それでおいしいパンが焼けたら、初めての人もきっと作ってくれるはず。そう信じて私が試作を始めたのがもう2年近く前のことです。「こねないでパンが焼けるの?」という夫の言葉に初めはちょっと無謀かなと思いましたが、かえってやる気が出た私。まずは試作100回の目標を立てました。材料を混ぜ、生地をこねないで一次発酵と二次発酵させ、形を整えて鍋で焼く。シンプルな工程です。分量は強力粉300g、水200ml、砂糖小さじ2、ドライイースト小さじ1、塩小さじ1/2。「300・200・2・1・1/2」と唱えてさっと計量します。

最初はよく失敗しました。うまく膨らまずに中がかたかったり、皮がパリッとしなかったり。水の量やねかす時間、オーブンの温度や焼き時間、使う鍋も変えながらほぼ毎日、作り続けました。それでも試作が50回を越えたころから手が生地になんとなく慣れてきました。一次発酵後と、二次発酵後に生地を丸めるとき、なにげなく生地を両手でもんでから引っ張るようにのばして丸め、裏側で閉じる、これを5~6回繰り返す。この作業がいい結果になるみたいだとわかってきました。100回を越えたころ、夫は「こねないでこんなにおいしく焼けるならすごい!」と言ってくれました。粉の味はむしろこのほうが感じるとも。ほっとしました。その後もせっせと私のパン作りは続き、チーズパンやピザをはじめ、味のバリエーションも広がっています。だいぶ前に試作400回も越え、もはや日常の一部です。みなさんにもぜひ、気楽に作れるこねないパンを楽しんでもらえたらうれしいです。焼きたてのあつあつを食べたらきっと感動して、また作りたくなると思います。

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