座長総括コメント


 第5回目は「環境」「社会貢献」「企業風土」の三つのテーマが論議されました。

 いうまでもなく今日、「環境」に対する企業の姿勢というものについては、社会の厳しい目が向けられており、生産、物流、オフィスなどのそれぞれの領域で現在すでに対処されている活動を継続していくことはもちろんのこと、これからは、たとえば北海道の氷、雪といった自然利用の工夫、或いは個々人の意識と行動が一致してくるようなしくみを創成するために企業も一役買うなど、環境対策が単なるエクスキューズやパフォーマンスに終わっていないのだ、ということを知ってもらうこと、即ち「本気」を示すことの大切さが、委員の方々から提言されたと思います。

 物まね的新商品を乱発すべきではないというご提言も、もっともなことと存じます。


 「社会貢献」については、現状いろいろなことをおやりになっていますが、肝心なのは理念と申しますか、どのような意図をもって実践されるか、という点だろうと思います。やはり雪印の本業、事業ドメインと何らかの関連性、つながりがあって社会から受け入れられるのであり、バブル期でのフィランソロフィ、メセナと浮かれてやったようなものであってはいけないと考えます。委員から、社会貢献もしっかりしたコンセプトを持っておやりになるべき、との御指摘がございましたがそのとおりだと思います。その点では、現在実行されている内容は決して派手さはありませんが地についたものであり、むしろ広報、パブリシティ、ホームページを通じてもっと消費者はじめその他に広く知ってもらうことが必要ではないか、という印象を持ちました。これからはコンセプトがしっかりしていて、意外性のあるものをご検討なさったら如何かと存じます。現状は本業建て直しが急務でありますから、身の丈にあった内容という、制約がおありかと思いますが、従業員のアイデアなどを取り入れてみるのも一つの考え方だと思います。


 最後のテーマは「企業風土」でございます。企業風土は良かれ悪しかれ企業文化でございますから一朝一夕にして修正できるものではありません。しかし今回の事故を契機としてむしろ一挙に転換できるチャンスでもあります。日経産業新聞の記事で東大の片平教授(経済学部・ブランド論)が「この事故で雪印は癌を0期で発見できた」とエールを送っていました。意味深長ではありますが、再建と改革のためには正に至言といえると存じます。

 企業風土については、会社側では
  1. 先人の遺産の上に胡座をかいていたこと。
  2. 変化対応のための自己革新努力を怠ったこと。
が問題点であると認識し、その原因は強い内部志向と現場軽視にあったと自己診断されました。

 自らの病巣をこのように率直にお示し頂いたことに敬意を表するとともに、その改善に向けた諸方策を地道に継続し、新たな企業風土を築き上げてゆくことこそ肝要ではないかと考えております。

 それから、これは企業風土のみならず、CS、ESの問題でもありましょうが、今回の事件がこれほど社会の耳目を集めたのは、「牛乳」という、現代日本では主食に準ずるともいうべきもの、すなわち、小さなお子さんからお年寄りまで、栄養を摂取するのに最適と国民の多くが考えているものの安全性についての信頼が揺らいだから、という面もあると思います。このことを考えますと、今後の会社の再出発にあたっては、マネジャーから現場の従業員まで、雪印の全役職員が、自分たちが扱っているものがそのような大事なものだということを常に自覚していることが、お客様の信頼を回復するために最も大事なことかと思います。企業風土の改革を進めるにあたっては、常時、このことを心に留めておかれたらいかがかと存じます。

 また、会社側より、特に「人事マター」についての提言を、というご希望があり、各委員から活発なご発言がございました。

 [純血を貫くか、放棄するか] 雪印にとって、まさに重い根幹のテーマではありますが、是非役員の皆様の慎重ながらも積極的なご検討を期待申し上げます。

 隠れた能力の発掘、ビジョナリーなリーダーを思い切って起用し、躍動させる舞台やナレッジ=「知」というものを総動員する体制造り等々、委員の諸先生方のご意見は、まさしく大競争時代の必須課題と存じます。既に大胆な若手起用を実行したとの社長のお話もございましたが、これからもクロス人事、計画的なゼネラリストやスペシャリストの育成等このチャンスを生かした改革的人事政策を推し進められますよう願ってやみません。事故を起すのも人ですが、苦境を乗り越え新しい雪印を創り上げるのも人ですから、まさに「人を活かす」をキーワードに徹底した改革の断行を重ねて望みます。


 最後になりますが、昨年10月以来約6カ月にわたって、会社側からいろいろ考え方をうかがい、私ども委員もかなり率直に意見を申し上げてきました。西社長をはじめ、会社の方々には、これを大変真摯に受けとめていただき、大変有意義であったと自負しております。しかし、願わくは、これが一過性のもので終わらず、今後継続的に雪印の経営に生かされることが何より肝要と思っております。そのために、何らかの制度的担保、たとえば今回の経営諮問委員会のように、会社の経営陣が積極的に情報を開示するとともに、外部の声に率直に耳を傾けるような仕組みを常設の機関として設置するなど、何かそういった制度をお作りになり、これによってより透明度の高い開かれた企業になられますことを期待して、締めとさせていただきたいと存じます。委員の皆様方、会社の皆様方、長い間ありがとうございました。

以 上







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