雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第十三回生産者の方々との対話会(1月28日高知県高知市にて)
2003年1月28日、高知県高知市浦戸の国民宿舎桂浜荘会議室にて、高知県の生産者の方々との対話会を実施しました。対話会には雪印100株運動に参加されていた生産者の方々の窓口を引き受けて下さった土佐農業普及センター山重さん、畜産酪農家の方々、野菜農家の方々など10名にご参加いただきました。雪印側は四国支店、人事部、パブリックコミュニケーション室の5人が参加しました。

【牧場見学】
写真 午前中はまず、円行寺で「山地(やまち)酪農」を採り入れた酪農をされている鹿嶋さんの岡崎牧場を見学させていただきました。山地酪農とは猶原恭爾先生という方が始められた酪農の方法であり、日本特有の地形を利用し、山の斜面を切り開いて芝を植えて牛を放牧することにより、牛の運動を促し、糞をたい肥に循環利用するという、自然の摂理を大切にした農法とのことです。鹿嶋さんのおじいさんの岡崎正英さんが始められた当初から、最大傾斜38度の山地に牛を放牧していました。
 現在は仔牛と乾乳期の牛のみ、朝山に登り夕方に戻るというスタイルだそうです。初めは搾乳期間の牛もこのように放牧していましたが、坂の上り下りでエネルギーを使ってしまい、乳が良く出なくなってしまったとのこと。理想と酪農経営とのバランスの難しさについてのお話を伺いました。
写真 見学中に偶然、仔牛が生まれました。残念ながらお産の瞬間は見ることができませんでしたが、生まれてすぐの仔牛を間近に見ることが出来ました。
 生まれて10分もしないうちに立ち上がった仔牛に驚きを覚え、また生命のたくましさに感動しました。





【対話会】
写真 園芸農家の高橋さんの進行のもとで自己紹介のあと、雪印側から分社化による経営形態の変化や、雪印乳業が1月以降、バター、チーズ等乳製品専門会社になったことをご説明しました。続いて生産者の方々からは、雪印100株運動のこと、雪印への要望、日頃の仕事への思い、消費者の方々に伝えたいことなどを伺いました。





対話会にご協力ご出席いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。

【生産者の方々からご意見・ご提言】
雪印100株運動のこと
雪印乳業の食中毒事件が起きて、酪農家が立ち上げた雪印であり、こういうことになってしまったら一番困るのは酪農家ではないだろうかということで、「高知でも株を買おうかね」ということになったのです。私たち女性が株を買ったということで、生まれて初めてのことではありましたが、「これから日本の経済の状況そのものも見つめていけるいい勉強にもなるのではないか」というわくわくネットワークの山崎洋子さんの言葉にも本当に感動しておりました。
ところが、BSEの発生という日本にとってあり得ないような大きな衝撃の事件がありまして、それに伴って雪印食品の偽装事件で大きな衝撃を受けたことは言うまでもありません。「またしても雪印が。日本の大手の業者が何をやっているんだ。農家は、日夜一生懸命乳を搾り、いい乳を出させるために一生懸命にまじめにやっているのに・・・。牛乳はどんなふうにして出ているのか、コップ1杯の牛乳をどんな苦労をして農家が生み出しているのか、牛たちが一生懸命家計を助け、どんなふうに命の源と言われるほどのものを育んでくれているのか。牛たちに対する大きな裏切りと感じ、私も株主として株を持っていましたが、悔しうて悔しうて本当に悩み抜きました。
2日間考え抜いた挙げ句、「もうこんな雪印は支えていけない。株を売ろうじゃないか」ということになりまして、みんなに相談しましたら、高知の人間も曲がったことは大嫌いですから、株を解約してしまいました。
そのあと3月には東京で「田舎のヒロイン」のわくわくネットワークの会がありまして、その時は西社長もおいでくださって会見したので、私はこの会に出席しました。会場でのやり取りの中で次々と意見が出ていたわけですが、私はその会議で株を解約した者の意見として「本当に今の雪印は何を言っているのか、何をやっているのか。日本中の人々を混乱させた責任は大きいですよ。私は高知県民として株を買っていたけれども、もうこんな雪印を支えていくことはできないと思い、株を解約しました」と発言をさせてもらいました。そうしたら、会場の各県の皆さんは雪印をまだ支えようという方たちばかりだったのです。ですから、西社長に対して「まだ支えようとしているこの人たちの気持ちを絶対に踏みにじらないでください。生まれ変わる気持ちで出直してほしい」と頼みました。
ここにお集まりになっている高知県の農村の女性リーダーさんに支えられて仕事をしてきました。田舎のヒロインネットワークの組織が設立するきっかけになったのも高知のここにお集まりの女性がその一端を担っているわけですので、その人たちの提唱することにはぜひとも参加をせないかんということで、雪印の運動にも一緒に参加させてもらいました。株をここに持ってきているのですが、平成12年の9月25日に雪印の株を買いました。その時には単価が407円で、雪印食品の事件があって、その後手放した時に、手放した単価が133円でした。約3分の1ぐらいになっておりました。株ですから、上がったり下がったりは常識的なことですけれども、初めて参加された方は元も子もなくなった。高知の場合は解約をしたこともありますけれども、それで終わりではなくて何らかのかたちで支援したいという思いは持っております。その中の一つとしてこういう会があると思います。そういう思いで今日参加させていただきました。
消費者に伝えたいこと
BSEというと、肉でも焼肉でも消費者は簡単にすぐやめてしまう、買わなくなる。そして、ほとぼりが冷めたらまた「食べよるやんか飲みよるやんか」という感じです。結局のところ、私も牛乳に関しては生産者やけど、ほかの野菜に関しては当然消費者の立場で思うのは、どうやってそれがなって(できて)、どんな思いで作られて、自分の口まで入っているのか皆さん作る過程が分かっていない。その間の流通の過程で少しかかわっている人も、どうやって作られているか、どういう思いで作っているのか、自分も含めて分かっていないと思うのです。それが分かったら、また違う思いで食べるし、かかわれるし、そんな思いがします。だから私も皆同じ立場という気がして今日は参加しています。
雪印とか企業の人に思っているのは、自分たちがかかわっているものだからとりあえず知ってもらわねばあかん。どういう感じで、もし八百屋さんならどうやって野菜ができているか分かってほしい、魚屋さんだったら魚がどう作られて、どういう過程でここに来て、消費者まで渡す、リレーするわけですから、分かってやったらもっといいのではないかなと思っています。
雪印乳業への要望
何日でもいいから農家に入って過ごしてみたら良いと思う。そんなに長い時間は無理としても、1週間でも。お金はかかるかもしれないけれども、企業がそういう現場に人を派遣することが長い目で見たら、企業のためにも絶対になると思います。酪農は命をつなぐ職業。牛のサイクル・乳が出るしくみを知ってほしい。それだけです。
テレビで、北海道で雪印の職員が酪農家のほうに行って見たりとか、普通の一般のチェーン店とか牛乳屋さんなどにあいさつを何日間か修業に、修業にと言ったら変ですけれども、何かそういうのを番組でいろいろとやっていました。テレビの対談とかいろいろあるものの端々を私は見ているわけです。その場面ではある程度のところで終わっているのですけれども、さて、その先はどうなっているのか。酪農の体験に行ってその後はとか、修業に何日間か行ってあいさつとかいろいろとあれに行って、そのあとはどうなっているのかは全然知らされてこないのです。その辺、見る見ないは一般の視聴者の問題ですけれども、何かでそういう過程を順番にやっておいていただいておれば・・・。そのときだけやっておいてあとは知らせないでいいことになりかねないと思うのです。テレビの力は大きいですので、経過的なものをある程度テレビで放映するようにしたらいいのではないかと思います。
消費者にも理解してもらうために、工場見学だけではなく、酪農の生産現場体験→工場見学→製品サンプル→料理教室の流れを提供してはどうか。最近小学生とか中学生の子供たちに体験学習があって、どんどんやられています。今度もし体験があるのならばどこかの農家ででも「酪農の朝」とかいう感じでビデオで撮って、それを会社で放映するとか、それの研修をして。ポイントは子供も喜ぶ内容であること。
家は私設園芸で野菜を作っています。私も3年前ぐらいから無農薬、無化学肥料で野菜に取り組んできまして、生産履歴ではないですけれども、作る過程できちんと出していく大変さというか、うそをつかずに自分はどれだけ我慢ができるかというところでやり始めました。ですから、雪印についても、どの段階でもきちんと正直にやってくれているか本当に気になります。何とかそれぞれの段階で我慢というか、うんと進めていける人たちがいればまた再生をされていくと思います。いろいろな厳しい状況があるとは思いますが、我慢の度合いです。いいものを本当に出していくところでまた頑張っていただきたいと思いました。
雪印はもっと女性を採用すべきだし、社員はニコニコした顔で仕事をしてほしい。いつまでも落ち込んだ顔をしないで。


― 対話会に参加した雪印社員の感想 ―
1.牧場見学にて
牧場主の鹿嶋様のご協力により牧場見学をおこなった。「山地酪農」を始めたのはおじいさんが自ら世界中を周って情報収集したとのこと。その他搾乳場所(パーラー)の新しいタイプの設計を取り入れたり、それを他の酪農家も取り入れているとのこと。その話を聞いたとき感じたのが、酪農家(生産者)の人たちは全て自分で情報を得ようとしなければなかなか入ってこないし、共有化しようとする意識が強く、またそうしなければ時代についていけないことを非常に意識してわかっているなと感じた。それはどの世界にも言えることだが、特に生物と直接携わっている立場の人こそ毎日変化する牛の体調や行動の変化に対応するため、未知の可能性に対する新しい情報への貪欲さがそうさせるのかなと、また事業主という立場上良いことも悪いことも全て自分に降りかかってくるという危機感からなのであろうと感じた。
貴重な体験として、牛の出産直後(瞬間は残念ながら立ち会えず)に遭遇することができた。生まれたての子牛の体中をなめまわす親の様子、必死に立ち上がろうとする子牛には感動でした。乳製品の原料となる牛乳の原点を見た気がした。常にこのような場面と遭遇し、毎日牛と共に生活している生産者は私たちの思っている以上に原乳を出荷するにあたっていろんな思い入れがあるのだろうと感じた。
2.対話会にて
今回の体験で感じたことは、いままでいかに物作りの原点を意識できていなかったか、そして原点にはさまざまな苦労のほかに思いが込められていること、それを販売する側として消費者へ伝える義務があると考えさせられた。これからは、酪農体験研修の機会ができてくると思うが積極的に参加しもっと深く大変さや思いを学びたいと思った。
そして、生産者とはもっと近い関係を保つ必要性の認識と、それがあたりまえといえる社内環境作りを心がけていきます。そのためのきっかけとして今回の対話会は非常に意味のあるものとなったと思う。
しかし、今後はこのような特別な形での集会ではなく、常にお互いがアドバイスや相談をしあえる関係でいられる環境や仕組み作りを考えたい。それは、わざわざこのような会を設けなければ接点が持てないような関係はもう終わりにしなければならないということである。
生産者の生の声を聴くことができた貴重な体験であった。そして今回の対話会で、我々の行動すべきヒントを頂いた。
1)生産者と雪印との距離をなくす意味からも、酪農実習は必須。
→我々が想像する以上に現場の生産者は大変な思いをされていることを強く感じた。酪農実習をきっかけとして日常普通に情報交換できる環境、風土を醸成することが必要と感じた。
2)生産から流通、消費に至るまでの商流・物流を俯瞰的に見ることのできる人材が酪農家、雪印乳業とも必要。
→雪印乳業社員全員が酪農を熟知し、現場に伝え、そこから産み出される製品で社会に対して何が出来るか、何を伝えるかを真剣に考える場をつくることが必要であると感じた。

出席者
生産者及び関係者の方々
沢田 智恵さん (和牛)
小野寺美佐子さん(野菜)
鹿嶋 浩子さん (酪農)
高橋 毬子さん (園芸)
宮崎 弘恵さん (酪農)
中越 多恵子さん(野菜)
武市 由美さん (園芸・野菜)
宮脇 真弓さん (果実)
大川 和代さん (土佐農業普及センター)
山重 慶さん  (土佐農業普及センター)

雪印社員
糸永 紀之 (四国支店)
大西 知恵美(四国支店)
保延 直毅 (四国支店)
渡邊 哲郎 (人事部)
松本 幹治 (パブリックコミュニケーション室)
当ホームページへの報告が遅れ、大変申し訳ございませんでした。
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