雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第十回生産者の方々との対話会(12月12日茨城県水戸市東赤塚にて)
写真2002年12月12日、茨城県水戸市東赤塚の茨城北酪農業協同組合本所会議室にて、生産者の方々との対話会を実施しました。対話会には生産者の方々の窓口を引き受けて下さった棯崎さんと、酪農家の方々(茨城北酪農業協同組合女性部=ミルククィーンズ会員)で雪印100株運動に参加されている10名にご参加いただきました。また、茨城北酪農業協同組合の古平組合長にもオブザーバーとしてご参加いただきました。雪印側は横浜チーズ工場、人事部、広報室等の5人が参加しました。
写真 対話会は茨城北酪農業協同組合のご厚意により本所会議室をお借りし、3時間にわたって行ないました。 始めに自己紹介のあと、雪印側から分社化による経営形態の変化や、雪印乳業が1月以降、バター、チーズ等乳製品専門会社になることのご説明、そして来年度は社員教育として酪農研修を採りいれる検討をしているお話をしました。続いて生産者の方々からは、日々の酪農業のご苦労や、消費者の方々に伝えたいこと、メーカーの消費者教育へのご要望、そして、雪印へのかつての身内のような思いと、二度の不祥事に対する怒りや不安のお気持ち、今後の雪印への期待のお言葉などを頂戴しました。
写真対話会のあと、出席された酪農家のお一人である菅谷さんの牧場に伺い、牛舎と搾乳作業を見学させていただきました。








対話会と牧場見学にご協力ご出席いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。

【生産者の方々からご意見・ご提言】
酪農業への思い
自分の中では、野菜を作ったり牛乳を出荷したりするときに、なるべくなら細菌を少なくしよう、農薬を使わなくしよう、大きく考えれば地球全体のことなんだから、自分達の未来を守るためなんだから、子供のためなんだから、という思いは常々持っています。
酪農というのは経営もしっかりしていて、後継者が育つ優良企業の典型だったんですよ。だけど実際には、優秀な酪農家でさえも、後継者を酪農家にさせられない事情というのがあります。かなり乳価が下がってきて、餌もなかなか自分の畑での餌では間に合わなくて輸入ということになって、餌の値段でかなり生産コストも違ってきますから、その中で牛乳の味も違ってきますんで、いろいろと自分のところなりの餌のやり方とか工夫して、それで苦労しています。出荷するときに、乳質が何%以上とか、10日に一度の乳質検査で数字を出しながら、寒い中をやっている。そういうことを雪印に知ってもらいたい。
せっかく雪印社員とお話するので、言うことをまとめておこうと思ったんですが、朝晩の搾乳と家族のことと色々やっていて、結局、毎日のことに追われて、まとめる暇もなく、ただ夢中で来てしまいました。何かたいそうなことが言えればいいのですけど・・ひたすら毎日仕事に追われて、あとは10日に一度の試験にクリアするだけで、気持ちのやり場がないものだから、何も出来ないんです。気持ちの余裕があれば、自分の頭でよく整理できて良いんですけど、組合の役員会に皆さんと集まったときにお話するだけというのが現状です。もう少しゆとりがほしいです。
やはりアメリカの真似ばかりして、ホルスタインしか飼ってないとか、必然的に乳成分は高いものを出す品種を多く飼ってる。そういう傾向はあります。ですからあまりアメリカの真似をしすぎたということが、今の日本の酪農の大きな弱点になってるのかなという反省はあります。
酪農体験研修について
(雪印社員の酪農研修の計画に関して)余裕があるときじゃないと受け入れできないな、という感覚です。でも実際は、本当に忙しい時に“助っ人”になるような人に来ていただけるのが一番助かるわけです。一回研修を受けた人が“助っ人”で来てくれるような、何回もホームステイしてくれるような、そういう方向性があれば、研修も生きてくるんじゃないかと思います。
外で草をよく食べた牛が出す乳と、与えられた餌を食べた牛が出す乳では味が違うんですよね。だから、酪農体験で「誰さん家の牛乳が飲みたい」というのが分かってもらえると思います。一頭一頭、牛の乳の味が違うのを感じてもらって、それが製品化されていく過程で自分がどういうところで何ができるかっていうのを体験の中で考えてもらうのも良いんじゃないかと思う。雪印も大きくなった故に見えない部分が出てきたというのを反省してもらいたい。
研修といえば、ヘルパーの実習生を順番に受け入れることになっていて、まさかそうとは言えないんですけど邪魔だと思うときもあります。ひとりで駆け回ったほうが早いときもあります。(実習生は)お客さんじゃないし、だからと言ってヘルパーさんでもないし、この人にどんな風に接すればいいのかな、と。仕事をするときには牛に対すること以外に気を遣いたくないというのが正直なところです。来てくれる人が女の人だったら良いんだけど、男の人だと私は正直一緒にやりたくない。相手(牛)は生きてるものだし、きれいごとでは済まされないことがいっぱいある。
受け入れる方も大変だけど、人間関係が豊かになるから。相手から頂くものはいっぱいあるんですよね。だからこっちからあげるよりも頂いていることのほうが多いかもと思うんですよね。
消費者の方々に伝えたいこと
今、一般の人たちも農家の内情を知りつつありますから、雪印もただ受け身になっているのじゃなくて、消費者を教育していったらどうですか。例えば値段が高くても安全なものを欲しいという人が増えている。そういう流れにうまく乗っていくというか、自分達は、値段は高いんですがそれに見合うこんなことをしていますというのを消費者に伝える。採算ラインとしては合わないなら、全部でなく、一部でも、少しでもやっていくと、消費者に受け入れられるんじゃないかと思う。
いま子供を育ててる人とかね、体を形成しなければいけない年齢の子供を持つ親の人達の懐が厳しいですよね。だから良い物を買えないんですよね。だから私達は、「良いものを食べさせて良い体を作ってもらいたい」「良い物を食べて暮らしていける場所にいるからこそ、消費者の方たちに良い物を食べてもらいたい」というのが伝えたいんだけれども、その辺のところは自分達の仕事じゃ無理というか、なかなかできないところだから、メーカーに是非やってもらいたい。
雪印へのご意見
今まで、どこに牛乳出してるの、と聞かれて、ずっと雪印って言いつづけてきた。それが、今では引け目を感じて、雪印って言葉を出すのが辛かったです。
前に組合長さんの家にお伺いしたときに、雪印の創業の精神という『健土健民』の書を見せていただいた。3月に「田舎のヒロインわくわくネットワーク」全国集会の時、前の西社長も、原点に帰って、ということでおっしゃっていたんで、私は出来る限りお手伝いしたいと思っています。牛乳の場合は、「この地域で搾ったものが飲みたい」「誰々の牧場の牛乳を飲みたい」と思っても飲めないんですよね。周辺にある他の牧場の牛乳と混ざっちゃうから。結局、この地域で搾った牛乳は茨城じゃなくて実際には他地域の工場の方へ運んでいるという話を聞いたりすると、すごくさびしい想いをしてます。やはり、「地元で生産されるものは、地元で製品化してもらいたい」「作った人の顔が見えるようにして欲しい」というのが、生産者としての思いです。チーズも、あんまり大きいのは良いとこが見えないですから、その辺のところを考えて、地元を大事に、例えば中標津町で搾った牛乳は中標津町でチーズにするとか、そういう形の、何か、名前に地名とか生産者の香りをつけたものをやってくださったらな、といつも思っています。
うちでは主人が雪印のヨーグルトが大好きなんですが、私が雪印にこだわると思っていなかったので他のヨーグルトを買ってきたら、「何で雪印を買わないんだ」と怒られまして、「他のだっておいしいし安かったのよ」と言うと、主人に「うちは雪印に牛乳を出しているんだ。生産者が雪印を裏切るのか」といわれました。こういう残念な事件は起きましたが、今雪印はスタートラインに立ったと思うので、頑張ってください。
皆さん方に対しては、私から言わせれば、遅まきだったなという部分はありますけれども、改めてこういう機会を作りながら原点に立ち返りながら、これからも皆さんと力を合わせて頑張っていただければ幸いだと思いますし、引き続いて今後とも酪農の発展に、今後の活動に、期待をしていますので宜しくお願いします。

また、対話会後、生産者の方から感想をいただきました。
人材開発の方より、平成15年度の社員教育のプログラムの方針として最低1カ月の酪農実習を検討しているとの話があり、今まで行なわれた対話会での生産者の思いが雪印側で受け入れられていることを実感した。
対話会の中で牛乳分社化も決定済との報告を受けた。12月中ごろから「日本の牛乳が生まれ変わる」と明るいメロディにのせて、テレビ画面を通してメグミルクの登場を伝えている。雪印牛乳に未練を言っても始まらない。新会社日本ミルクコミュニティ(株)に期待を持つしかない。スーパーの棚に1月7日から真っ赤なメグミルクの牛乳が並ぶのを応援していこう。
水戸市を中心に笠間市、内原町、常北町と近隣10キロ周辺より集まった酪農家の女性たちは、朝夕の搾乳、給餌、管理作業の合間に、雪印の株主となり、社会経済の一面をこの2年間学習しながら雪印の行方を案じていた。今回、株で出資した資産価値を誰も文句をいう人はいなかった。そして、365日毎朝5時に起きて牛舎に入り仕事をし、10日に一度の乳質検査(体細胞数、細菌数、乳脂肪分、乳固形分等)のデータをクリアすることに神経を尖らせ、少しでも乳質レベルを上げ、乳価に反映するよう努力し続けているのである。


― 対話会に参加した雪印社員の感想 ―
対話会のなかで、生産者の皆さまが朝早くから夜遅くまで毎日休みなく続く作業、生き物を扱う大変さ、乳質の維持及び管理、見えない物(細菌類)との戦いなど、酪農作業の現状をおっしゃっていました。皆さまは雪印乳業のことを本当に心配してくださっています。今後の雪印乳業の体制がどうなっていくのか、そして分社化により、生産した生乳がどうなるのか。
また、消費者向けの広報ばかりでなく、生産者にも心配りのある広報をしてほしいと要望がありました。雪印製品がスーパーに置いていない、買いたくても買えない、積極的に営業すべき等たくさんの意見・要望が出ました。
対話会の後、菅谷様方、かしの木牧場で酪農体験をしました。乳房の殺菌、ミルカー取り付けから搾乳まで、牧場の方にご迷惑をおかけしながら貴重な体験をさせていただきました。ご自分たちの仕事に誇りと自信を持ち、試行錯誤で日夜努力されています。我々もその心を大切に、自分の仕事を全うするよう頑張っていきます。
対話で印象に残った酪農家の皆さんの思いです。
・このような対話会での女性の発言で、新しい視点が芽生える。
・雪印の創業の精神である「健土健民」の書を組合長の奥さんから見せて貰った。
 原点に戻って頑張ってほしい。
・誇りに思っている雪印が・・今は雪印と言うのが辛い。
・例えば:チーズの原料比率とか、何で国産チーズと輸入チーズを使っているのか?
 「真実を伝える」こと。
・10日に一度の乳質検査をクリアしないと収入がない。
所感として雪印に対する思いが身にしみるほど感じられました。
酪農体験は短時間の体験しか出来ませんでしたが、140頭もの牛の搾乳を二人で手際よく行っているのにびっくりしました。一日二回の搾乳で1頭当たり25kl〜30klの乳量をだしている。自分も初めて大変さを実感した。
この体験実習は特に入社1年目から10年目の社員に必要と思われます。今回の生産者との対話会に参加させていただき感謝申し上げます。
対話会では、日常業務の中や生活の中でなんとなく気になっていたことが話題に上り、「ぜひこれをやって欲しい」との指摘をいただいたりして、「なるほど」という納得の思いと、「つまり役目を果たせていない」という反省の思いがありました。具体的に一つあげると、(生産者の方の言葉を借りると)“消費者の方々を教育する立場にもなって欲しい”ということです。
現在の消費行動は、“より安くよりお得に”という流れがあると同時に、“価格に見合う価値が認められるのならば、たとえ高くても”という流れがあると思います。酪農家の方から「牛乳が水より安い」現状を憂える声が上がりました。
・人間と同じ生きものである牛を数十、数百頭と管理する休みの無い365日の生活。
・一頭の牛でも、出すお乳は4本の乳房でそれぞれ(風味や濃度が)違ったり、牛の体調の善し悪しに
 よって違うこと。
・それでも求められる(受け取ってもらえる)のは、厳しい基準をクリアした、一定の品質をもつ生乳
 だけということ。
お店に並んだ牛乳の見た目はいつも同じでも、元は一頭一頭生きている牛のお乳であり、毎日毎日、乳房の一本一本が違う状況にあるという事実を知ることで、目の前にある牛乳そのものの意味が変わるような気がしました。
参加された生産者の方から、日常的に日本の未来を考えているという言葉がありました。牛の健康とお乳のこと、酪農を通じて未来のことを考える毎日であるという言葉でした。
その言葉に表れているように、生産者の方々はご自身が作られたものに強い自信を持っておられます。そしてご自身が作られたものを是非食べて欲しい、飲んで欲しいと強く思っておられます。“自分で作って自分で売る”ことが難しいために私たちメーカーがあるわけで、多くの生産者の方々は、この大切な重要な役目を私たちが果たしてくれることを願っていることがダイレクトに伝わりました。
酪農現場の見学では、生産者の方々に本当にご迷惑をかけていると思いましたが、今回初めて参加して、自分が仕事をしていく上で非常に重要な意味を持つ経験だったと思いました。ぜひ一人でも多くの社員が経験すべきと思いました。

出席者
生産者及び関係者の方々
棯崎 ひろ子さん(果樹、繁殖養豚)
山室 汎子さん (酪農)
菅谷 美智子さん(酪農)
浅井 富江さん (酪農)
大武 典子さん (酪農)
桑島 澄子さん (酪農)
寿々木 正子さん(酪農)
小豆沢ひろみさん(酪農)
笹沼 しついさん(酪農)
大槻 すみさん (酪農)
橘  富士子さん(酪農)
古平 力さん  (茨城北酪農業協同組合)

雪印社員
池上 一利 (横浜チーズ工場)
加藤 義信 (横浜チーズ工場)
澤田 久喜 (人事部)
新屋敷久美子(広報室)
松本 幹治 (CS推進室)
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