雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第六回生産者の方々との対話会(6月26日 神奈川県藤沢市長後にて)
写真 2002年6月26日、神奈川県藤沢市長後にて第六回生産者の方々との対話会を行いました。今回は、神奈川県在住の酪農家や畜産農家、果実農家、観葉植物農家の方々など7名の方々と、雪印社員8名との対話会でした。
 3時間の予定でしたが、厳しく前向きなご意見が多数出され、時間をかなり延長し、そのでも皆、言い足りないものを残して残念ながら解散、という会でした。対話会後、出来ればもう一度行いたいとのお声も頂戴しました。
 会の後、生産者の方々からのプラムや手作りのパンとジャム、それにお差入れをいただき、おいしくいただきました。雪印からは、神奈川県の14戸の酪農家さんの生乳のみを使用した「作り手の顔の見える」牛乳『おれたちの牛乳』を試飲していただきました。

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【雪印への要望・提言】
わくわくのメンバーの作っているものは、トータルでものが見えています。つまり最初から最後まで分かる。
人間が食べるものって、「商品」とか「製品」ではなくて、「食べ物」なんだよというふうに認識を持ってやれる仕事の規模って、あるんじゃないかなあという気がしています。だからといって大規模な組織がいけないということではなくて、そういうふうにトータルで感じ取れるような仕組みに変えて、それぞれの人たちがそこの中でそれを日々拡充して、例えば酪農家の方たちが、におい、形、肌など5感全てで感じてやれるような、そこに何か一つの連帯というか、何かあるんじゃないかと思っています。
実際に私たちは20数名で食べ物のグループをやっていますが、これってもてはやされている割には、生産する人も、消費者も、結構つらいものがあります。かなり厄介で大変なものです。その大変な思いをしないとそういうものが手に入らないという仕組みそのものにもすごく疑問を感じています。だからそういう意味で、雪印も今回のことをひとつのチャンスとして、今までそれが果たせなかった何か一つ、大きなところでもそういうことができるんだよというような、何かこう新しいやり方を示してもらえるととてもいいなと思います。
きょうここに男性の方たちいらして、ご自分でどの程度家族のために料理をしたことがありますか。子供さんがいらっしゃらない方もあるかもしれませんが、ご自分の子供さんにどういうふうな育児に関連してやっているのか。そういう経験のない人たちが現場でつくっている。そういう中で、商品じゃない、製品じゃない、食べ物なんだよという感覚を本当に持てるんだろうかという疑問があります。
そういうことも含めて、責任を肌で感じることが必要だと思います。いくら仕組みがしっかりできていても、それがなければ、また同じことを繰り返すと思います。そこら辺をどういうふうに中でやるのか。ぜひ何か吟味してくださるといいなというのがお願いです。
養豚・豚肉加工製造販売の一貫経営を行なっています。毎日何百人という人に販売する中で生産者の心を伝えて、そして食べ方、それから安全性、製造工場の中の製造過程、そういうものを本当にあからさまに言っています。そして、ハムの場合は、よくお客様が無添加、無添加と言われます。でも、スタートのときは無塩せき、無添加のものを目標にして始めたんですが、ハムやウインナーなどを限りなく安全で、そして昔のようなおいしさで販売するならば、どうしてもリン酸塩や亜硝酸は入れなきゃだめなんです。そういう部分で、半分戦いです。お客さまが、なぜそういうふうにしたって言うんですけど、こうだからこうしてる、と言うと、買っていってくれるんです。そして何よりもおいしい。農場のほうで、要するにどれだけこだわって生産しているかを常に伝えておく。
でも、本当にこれって大変な仕事です。ですから大きい会社の人のように、たくさんお客様を集められません。でも、お客様は今信頼の人、信頼よりも信者というくらいになって下さっているものですから、そういう人から個人に口コミで伝わっていくのだと思っています。
現在、精肉の場合は原産国アメリカとかって書きますけど、ハムやベーコンになったら書かないでいいんです。国内産、地場産のベーコン、焼豚、ハムは味の違いがわかりますよ。だから、牛乳なんかも、そういうだれがつくってるかわかるものを、たとえ雪印の中でも一つのコーナーにそういうものを入れていって、これはどこどこさんのとわかる商品を売っていってだんだん回復するというやり方だと思います。
うちでは、製造者も製造の合い間に店頭に出てお客さまに接しています。繁忙期はそんなことしてられません。もう製造で夢中です。でも、ぱたっと暇になる8月とか1月は、製造者も店に出る。そしてお客様に説明する。お客さんは、白衣を着て前掛けをかけて出てくる人から商品の説明を聞くのがすごくうれしそうです。うれしそうというか、うれしいんです。すごい満足して帰ります。
そういうのが販売のいいところで、雪印さんも大いに、スーパーに行って、自分が休みの日でも、こっちのあれがどうかと思ったら雪印の意気込みを伝えていく。そういう人が買ったものがおいしければ、またほかの人に話してくれるという好循環が生まれると思います。
東戸塚で酪農をやっています。農業って一回つぶすと二度と立ち上がれないんです、はっきり言うと。もう酪農を一回やめたら、二度と酪農はできないです。私が東戸塚で酪農をしているという意味は、牛乳が牛から、子供を産んで乳を出すということを皆さんに見ていただきたい、それがすごく底辺にあるんです。都会の生産者は、やはり消費者に近いですから、その消費者がきちっと見れるような、本来の酪農家の姿になっていかなければいけないんだと思っています。
だけどよく回ってておわかりでしょうけれども、日本の酪農家の現実って、雪印の問題以上に、酪農家自体がどこへ行っても大変だと思います。
きれいなものを持って機械化をきちっとされて、人もヘルパーがきちっと入ってという経営をしているのは上位の何%かに過ぎません。その残りの70とか80%の人たちがどれほどの思いをしてその牛乳を搾っているかということです。
それは、はっきり言いまして、適正価格ではないからです。確かに流通の問題になったときに、乗って安いということは若い世代の方たちが子供に飲ませるには1円でも安いものを求めます。それは確かです。だけど、やはりこれから10年、20年先の牛乳を飲みたいと思うんでしたらば、やっぱり適正価格ってあります。
私が思うことは、やっぱり次の世代につながないと、そこで途切れたんじゃだめなんです。それが一番大事なことだと思うんです。雪印さんの今回のことは、すごくある面で、生産者が一生懸命汗流して365日やって努力をしている姿が見えなくなってしまったことも背景にあって、起きたのではないかと思っています。
やっぱり食というのは、ちょっと前までは本当に飽食の時代みたいな形で何でもかんでも輸入してというふうな形で、おいしいもの、おいしいものって追求してきましたけど、でも大分ここに来て、おいしいものもさることながら、安全なものが求められています。私、農家でなく嫁いで一番思うことは、旬の野菜は取り立ての野菜が本当においしいんです。それを知りました。我が家の牛乳も、普通に沸かして飲むととっても甘いです。多くの方々が本当の牛乳の味というのを知らないから、例えばこれからは私はこの地域で、自分ができることをやっていこうと思ってるんです。
だから教育ファームとして、小学校が周りに3校ありますから、3校を受け入れようと思っています。そうやって自分にできることをきちっとして、1人ですべてのことをターゲットにやろうと思っても無理でしょうから、参加してくれる方たちというのがやっぱりあると思うんです。そういう人たちにきちっと、牛乳というのはどういうふうな状態でできてどういうふうになっているかというのを見せてあげようと思います。
私は雪印さんに、生産者として一番思うことは、適正価格でやっていって欲しいということです。
牛乳の値段には疑問を感じています。あの牛乳を朝早く起きて搾って、それで下手すると缶ジュース1本の値段です。缶ジュースが120円入れると出てきて、牛乳がそれにちょっとプラスしたぐらいの値段で、1リットルのものが買えるということ、これではもう第1次産業はたまらないと思います。生産者が、すごく苦労されて、牛を飼って牛乳を搾るということがどの程度大変なことかというのはわからないんですか、という気持ちで一杯です。
私が今なぜ酪農家になったかというと、はじめはただの憧れと酪農に対するイメージですね、牛がいるというイメージだけだったんです。それで北海道まで自分で行ってみました。それが、どういうわけか北海道の酪農家じゃなくて神奈川の酪農家になってしまったわけです。どっちがいいかわかりませんけど、第1次産業ってすごくイメージってきっとこれからやっぱり大切になってくると思います。やっぱりもっと現実的なところも必要だけども、今子供の教育とかそういう問題も含めて、私はそのイメージみたいなものを大事にしたい。だからやっぱり汚い牛からは牛乳は搾りたくない。時間もかかるけども、いつもきれいにしている。これやらなきゃあ、あと10分でも15分でも早く終わるなと思うけども、やっぱり毎日続けてやってると、それをやらずにはいられない。やっぱり、ああ、きれいな牛から牛乳搾って、乳質の検査とか流通の検査とかありますけども、そういうのしか結果は表れないですけど、それを励みじゃないですけども、ほんとに都会の中の酪農としてこういうイメージを続けていきたいなと思います。
近所で、小さいお子さん連れて、毎日のように、ほんと5分ぐらいなんですけども、おじいちゃんが自転車に子供乗っけて来たりとかあるんです。顔なじみになって、「おはようございます」とか、まだこちらの方のように教育ファームになろうとか、そこまではいってないですけれども、そんなイメージを私はやっぱり大切にしたいんです。
それから、牛乳の付加価値というのを考えているのですが、5、6年前からいろいろ考えて、考えては潰れ、考えては潰れで、今まだ試行錯誤中です。
教育で言えば、私がやってるハム工房の場合は、近隣の小学校の3年生から5年生の社会科の授業に第1次産業を学ぶというので、もうほんとに忙しいぐらいに、工場の話を聞きたいとか、養豚場のほうで話を聞きたいというのが常にあります。もう多いときなんか1日3校ぐらい来る。それを子供に一生懸命伝えて、はじめは子供は消費者じゃないと思ったんです。でも、おばさんがほんとに真心込めてつくってくれてると思うと、遠くからでも親を連れてくるんです。「おじいちゃん、おばあちゃん、ハム工房に買い物に行って」って来てくれるんです。
雪印は、そういう面で、これから育っていくお子さんたちの工場見学なんていうのはありますか。 今、要するに、小さいなりに小学校3年とか5年ぐらいでも、今度雪印さんがこういうことをしたということがわかっていますよね。で、一生懸命スタッフが話して、理解をしてもらえます? 子供たちに。今はそうじゃないんだと。おいしいものをつくろうと一生懸命してるんだというのを理解してもらえます?手ごたえあります?
30、40の主婦よりも、小学校の子供にいろいろ伝えていくのって、絶対に必要だと思うし、ほんとに子供に真剣に安全性とかおいしさを求めていますから、ダイレクトです。お父さん、買いにいって。お母さん、連れてって。そうすると、子供の手前必死で聞くというか、そしておいしければ、あとに続くと思います。それを是非雪印にやって欲しいと思います。
食に対して、今ここでようやく『農業新聞』なんかに田植えをどこの小学校にさせてますとか、そんなのが話題になってきたんですけども、農政なんかとの話し合いにもう少し第1次産業のものを教育の場に取り入れてもいいんじゃないか、もう少し余裕を持って教育をしていってもいいんじゃないかと思います。
ただ雪印の工場を子供に見せるんじゃなくて、酪農があって、その酪農家が安全でおいしいものをつくってるんだよという一連で子供たちに伝えていくということが重要だと思います。それは酪農家の仕事かもしれないけど、乳製品をつくっている会社もそこまで酪農家と親密になってその辺のことを伝えられるということで、次世代を担う子供たちにも、より理解してもらえるかも知れないと思います。要するに、雪印の工場を見学する。その近くに酪農家がいなければ、酪農家のところのビデオなり何なりを撮ってきて、牛飼いの人たちの大変なところを見せてから牛乳になっていくみたいなことです。
日本人ってすべての面で、野菜とかそういう果物なんかもそうなんだけど、どこどこ産というところにぱっと飛びつくみたいなところがあります。信州のブルーベリーとかっていうと飛ぶように売れるけども、じゃあ神奈川のブルーベリーなんていったら酸っぱくて食えないんじゃないかみたいな、もうイメージ的にそういうのがすごくあるから、大人がそうだということは子供も同じような判断をしてしまう。子供に、本当の判断を自分で出来るような教育をしていくことは大事なことですね。


【雪印社員の感想・その後の議論】
一番衝撃を受けたのは、「このままではあと50年後には、日本で生乳が飲めないかも しれない。脱脂粉乳を飲まざる得なくなる」という言葉でした。つまり今の酪農家の経営状況は限界にきていて、乳価等の引き上げや後継者育成のための援助等がなければつぶれてしまうおそれがあるということでした。
これまで、このような認識がなかったこととあらためて「生乳の尊さ」を思い知らされました。
今後に向けては、乳のみならず食に対する啓蒙活動の大切さは、やはりもとめられてることと思いました。
今、当社は製造工程などをお客様に一部ご紹介してますがそれにとどまらず、酪農家の方々の活動も含めご紹介していければと思います。それによって乳は、他の工業商品とはあきらかにちがう自然の恵みの産物だということを伝えていきたいと思います。
また、こうしたことを伝えようとするスピリットは、他社でなく雪印にしかできないことでありこれこそが我々の企業存在価値の1つであるように思います。
最後に、わくわくネットワークのみなさまが、本当に強い信念をもって自らの取り組まれている姿がとてもステキでした。誇りをもって仕事することの大切さを感じさせていただきました。
人員削減、会社合併が進みますが、今、当社が考えている生産者に立ち返れ、健土健民だと唱えているその姿勢をとださないよう継続するべきだと考えています。私は青山 永薯「黒沢酉蔵」を通して、健土健民=生産者のプライドを製品にしたもの。と考えています。
これからも生産者との対話を尊重して業務に取組みたいと考えています。酪農家とここまで親密な企業は他にはありません。もっとそのことに自信を持ち、企業の強みにすべきだと考えています。
「大きな会社は全体を見渡すことができない」という意見は同感です。自分の所属する組織の利益が世の中の常識のように誤認してしまう危険を防ぐには、社内のルールを整備することも大切だが、従業員や経営層が、部門を越えた従業員同士、生産者・消費者との接触を絶やさないようにしなくてはならないと思った。
また、自分の家族や近所の人と正常な付き合いができ、社会の一員として活動できるような労働環境も、食べ物を扱う企業としては欠かせないと思った。
こうした会合は、できる限り多くの社員が体験するべきだと思う。できるならば、会合は牛舎の近くで、牛を見ながら行うほうが、気付きも大きいのではないかと思う。
お話の中で、閑散期には工場従業員も売り場に立つ、とおっしゃっていたが、当社でも、同じような仕組みは取れないだろうか。工場の人員がかなり逼迫していることは確かだが、せめて私たち内勤者が売り場に立つ機会を持たせてもらえないだろうか。
参加された生産者の方々の中には、自分で加工して販売されている方もいらっしゃった。生産者の殆どは、本当に良い農産物を作りながらも、それで精一杯で、流通・加工は他に任せざるを得ず、一般品と同じ扱に甘んじているのだろう。
当社で、デパートの地下にでも、小さな牛乳工場・バター工場・チーズ工場をもったショップをつくれないだろうか。生産者自慢の上質の生乳を使って、当社の最高の技術で、お客様の目の前で加工した製品を販売する。生産者の心、大地の恵みをお客様につなぐという言葉を、目に見えるものにすることが、ブランドの再構築には欠かせないのではないだろうか。
工場でのPRは、「どうやって加工しているか」の説明に、「どうやって生乳が生み出されるのか」も加えるようにすべきではないか。
今回の生産者との対話により改めて感じたことは、「生産者→乳業メーカー→消費者」の構図の中、雪印の犯した2つの不祥事により、何の罪もない健全な生産者の生活や夢までも脅かしている事実に痛感した。
その尊い牛乳を預かり製造・加工している乳業メーカーの一員として、今後はお客様志向と同時に、”生産者志向”という「心」も、片隅にではなく、心の真ん中に置き、日々の業務に遂行していきたいと思います。そうする事により、自分の言動に自然に反映できる源(パワー)を頂いたような気がします。

私たちは対話会の後、再び社員だけで集まり、いただいたお話を基に、今後行なうべき具体的活動を議論しました。まとまった主な意見は下記の通りです。
まず会社として、積極的に酪農体験や酪農家と向き合う活動を推進すること。
単なる景品の一種でない、主旨を明確にした「工場見学&酪農体験フェア」などを試行し、生産者と消費者をつなぐ透明なパイプ作りを模索していくこと。
営業だけでなく、内勤者や工場の従業員も積極的に店頭に立ち、お客さまと触れ合えられるようなしくみを作っていくこと。

出席者
生産者の方々とお仲間
肥田裕子さん(酪農家)
石田豊子さん(酪農家)
北見満智子さん(養豚・豚肉加工製造販売)
北村輝子さん(観葉植物)
山崎久民さん(「女と農ネットワーク」主宰・税理士)
小瀬村泰人さん(ライター)
井上節子さん(果実)

雪印社員
大城史郎(厚木工場酪農課)
岡田千秋(マーケティング部宣伝G)
小川修一(厚木マーガリン工場製造課)
清見英隆(神奈川支店市乳営促課)
鍔良彦(物流部物流企画G)
菅谷正行(CS推進室CS推進G)
松本幹治(経営企画室信頼回復PT)
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