チーズ・海外現地レポ
~ドイツ編~

日本以外の国ではどんな風にチーズを楽しんでいるの?
海外在住の現地レポーターに、チーズにまつわるあれこれを聞いてみました!

今回は、春を目前にしたドイツ・ミュンヘンの市場を訪れました。レポーターが立ち寄ったお店は、トレーラーカーでミュンヘン市内各地を巡り、良質なチーズを提供している“チーズ専門店”。ショップオーナーにおすすめのチーズを聞いてきました♪

レポーター紹介

ドイツ発チーズレポーター M・Yさん
1994年よりドイツ在住。ミュンヘンにて、ドイツ人の夫と3人の息子と暮らしている。ミュンヘン市内の大手食料品店で接客経験があり、チーズへの造詣も深い。

私が訪れた市場は、市内中心部から地下鉄で20分ほどのローゼンカヴァーリエル広場(Rosenkavalierplatz)。ミュンヘンでは決まった曜日ごとに、主要な広場に市が立ちます。ここローゼンカヴァーリエル広場では、毎週木曜日になると野菜や果物、肉、魚などの生鮮食品を扱うワゴンや、パン屋、花屋など10~15店ほどが出店。春には新鮮な白アスパラガスも並び、よりいっそう活気づきます。

こちらの市場にはチーズ専門店「Käsealm(ケーゼアルム)」が、毎週出店しています。店頭に立って接客するのはオーナーのクリスチアン・エルトルさん。おすすめのチーズを伺うと、次の3品を教えてくださいました。

チーズ専門店「Käsealm(ケーゼアルム)」
公式HP:www.kaesealm.net
訪れた市場の住所:Rosenkavalierplatz, 81925 München Geamany

マイルドな味わい!山羊のオーガニックチーズ
「Ziegenbuei(ツィーゲンブエイ)」

このチーズは、BIOチーズ※1の1つで、バイエルン北部アンベルクの山羊乳で作られたクリームチーズです。一つ4,59€。ツィーゲは山羊、ブエイは産地の方言で男の子の意味。「山羊坊主」「山羊小僧」のようなニュアンスでしょうか?赤いトッピングはパプリカ粉で、辛くはありません。ハーブや、黒胡椒バージョンもあります。

  1. ※1「BIOチーズ」…“化学飼料を与えない”“牧草は農薬不使用”など厳しい基準で育てられた牛や羊、山羊のミルクで作る、オーガニックチーズです。

春になってから放牧され、青草を食んだ山羊のミルクは独特の匂いがあり、苦手な人もいるでしょう。でもこちらのチーズは、干草を食べて越冬した山羊乳のみを使用しており、マイルドな味わいです。山羊特有のさらっとした舌触りも心地良く、赤ワインにぴったり。ほんの少しかじるだけで、ワインの味に奥行きが出ます。朝から食べるには少々くせが強いですが、週末のパンブランチなどにもおすすめです。

今の季節しか味わえない“ホイミルヒケーゼ”
「Baldauf Zitrone & Pfeffer(バルドアウフ レモン&ペッパー)」(写真右)

ミュンヘン西部、アルゴイ地方のチーズです。100g2,49€、写真のサイズで7,18€。固形分中の乳脂肪分が50%で、ゴーダなどと同じく、切るとナイフにくっついてなかなか取れません。基本的にマイルドですが、少々塩気が強い印象です。
このチーズには、「Ziegenbuei(ツィーゲンブエイ)」と同じく“干草乳”が用いられています。冬の間、配合飼料ではなく、ハーブ入りの干草「ホイHeu」を食べさせた牛のミルクのみを使用。このような製法で作られたチーズは「ホイミルヒケーゼ(ホイミルクチーズ)」と称され、認定基準は厳しく定められています。ホイミルヒケーゼだけがもつ独特の風味をより活かすため、表面にハーブや胡椒をまぶすのが特徴。冬の終わり~春先だけに市場に出回る、季節限定のチーズです。

熟成度合いが好みで選べる“ツウ”好みのチーズ
「Alter Tegernseer(テーガルンゼー・アルト)」(写真左)

ミュンヘン南部のテーガルンゼー(テーガルン湖)・チーズ組合のもの。100g2,89€、写真のサイズで7,80€。3ケ月、6カ月、12カ月熟成があり、好みによって選べます。今回チョイスしたのは12カ月熟成のもので、きめ細かくて透明感があり、グリュイエールに似た味わい。塩気も強く、古いチーズ特有の喉にひっかかるような辛味がごくわずかに感じられます。香りは「臭くなる一歩手前」のギリギリで、ツウ好みかもしれません。
外側の固い部分も、細かくおろしてグラタンなどに使えます。ノーマルすぎて少々退屈な味わいのチーズに混ぜて、アクセントにするのもいいでしょう。ドイツ南部のパスタ料理「ケーゼシュペッツレ(Käsespätzle)」や「シンケンヌーデル(Schinkennudeln)」など、料理の素材としても幅広く使えるチーズです。

~ライター後記~

市場の取材は3月初旬。ドイツではイースター前の時季に当たり、宗教上の理由から飲酒を控える人が多く、市場で売られるチーズの種類も少な目だそう。にも関わらず、これほど多くのチーズがショーケースに並ぶとは!ドイツの豊かなチーズ文化に驚かされました。

Text:Akiko.T

関連マガジン

他のチーズマガジンを読む

チーズQ&A

チーズQ&Aを見る

この記事をみんなに教える